小説の基礎練5: 髪の長い女 (お題:髪の長い女)

JUGEMテーマ:自作小説
 

小説の基礎練です。詳細はリンク参照。

 

 

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あるところに貧しい機織りの娘がいました。

 

娘は、村で一番美しく働き者の青年に恋していましたが、自分には高望みだと思ってもとから諦めていました。

というのも娘は目鼻立ちはそれほど悪くないのですが、まるで枯れ枝のようにがさがさの、老婆のごとく醜い髪を、いつも気にしていたのです。

そんな醜い髪でも、嫁入り前の娘は腰まで髪を伸ばすというこの村の習慣に、従わないといけないのでした。

 

三日月の窓辺で機を織りながら、娘は誰に呟くともなく呟いていました。

「ああ、美しい髪が欲しい。それさえあれば私だって、人並みくらいには見えるのに」

三日月にの端っこにぶら下がっていた悪魔はそれを聞きつけると、月を滑り下り、彼女のいる窓辺まで降りてきました。

「君の髪は美しいよ。本当は美しいのさ。でも醜いのは君の心根。ひがみ、そねみ、それが君の髪を枯らしているのさ」

「あなたは誰」

「僕は悪魔さ。君の心根がとても良い匂いをさせているから、嗅ぎつけて来た」

「何を言っているの。私はそんな醜い心根なんて持っていない……こんな髪をしているせいで、心が曇っているだけだもの」

「美しい髪が欲しいかい」

「ええ、欲しいわ!」

娘の叫びが喉から飛び出ました。

「そう言うなら、試しに、美しい髪をはやしてあげることもできるけど」

「本当?!」

「でも、君の心根が変わらなければ何の意味も無いと思うけどね」

「そんなことないわ、美しい髪があれば私は美しい心になれるわよ!」

「それと、タダというわけにはいかないよ。

君がそこから生み出すものの中で、一番出来の良くて、複雑なものを、もらっていくからね」

悪魔は娘の膝の上に置かれた機織りをちらりと見て言いました。

「いいわ、織物なんていくらでもあげる」

「よし分かった」

悪魔が指をパチンと鳴らすと、娘は気を失ったように眠りに落ちてしまいました。

 

翌日、娘が目覚めると、自分の頬をなでるシルクのような手触りにハッとしました。

いつもちくちくと頬を刺すいまいましい癖毛が、まっすぐでつややかな、漆黒の髪に生まれ変わっていたのです。

娘は別人のように明るくなり、外出も増え、いろんな村人に気さくに話しかけるようになったので、すぐ噂になりました。

美しく、自信に満ち、愛嬌に溢れた娘は自然と男の人に声をかけられる機会も増え、あこがれのあの青年とも、気軽に話せるようになりました。

「悪魔の言っていたことは嘘。私の心根が腐っているなんて。腐っていたのは髪よ!」

しかし不思議なことがひとつありました。

娘の髪の伸びるはやさです。

一月もしないうちに、腰までだった髪は足元に届くほどに伸びていたのです。

さすがに驚いた村人のなかには、悪魔憑きとはやしたてる者もいましたが、娘の自信に満ちた明るい振る舞いを見ると、それを打ち消しざるをえませんでした。

 

月夜の窓辺、娘が憧れの青年を思いながら機をうつたび、まるで言葉に出来ぬ想いを表すかのように、すくすくと髪が伸びていくのでした。

髪が背丈と同じになったら、彼に打ち明けよう。娘はそう決心していました。

ついに足元に髪が届いた日、母が言いました。

「自慢したいのは分かるけど、いい加減髪を切りなさい。あんまり長いと、憑きものがつくよ」

娘はそれを無視しました。

美しい髪は娘の誇り、切る気なんてさらさらありません。

そして娘はついに青年を納屋に呼び出し、一途な想いを打ち明けました。ずっと青年を思いながら機をうっていたこと、髪が足に届いたら打ち明けようと決めていたこと。

青年は、娘を呑み込むほどに伸びた髪を見ながら言いました。

「重いよ、そういうの」

彼女は、青白い顔で立ち尽くしていましたが、突然納屋のハサミを持ち出すと、あごのあたりでざっくりと、髪を切ってしまいました。

もはや赤子ひとり分ほどの重みがありそうな髪が、地に落ちました。

「これで、重くない? これで、重くない?」

彼は怯えて逃げてしまいました。

 

それからというもの、娘は人が変わったようになりました。

美しい髪を振り乱しながらあけすけに男を誘いました。

未婚で髪が長くない女は村では変わり者あつかいされました。

しかしその影のある独特の色気、そして相変わらず輝かしいばかりの髪は、男をひきつけました。

彼女の髪は相変わらず伸びるのが早かったのですが、髪が伸びるたび、男をさそいたくてたまらなくなりました。

そして男に飽きて、男を変えるたび、髪を切り、市場で売ってしまったので、いつも腰に届かぬ長さでした。

彼女の髪は非常な高値で売れました。

彼女は相当なお金持ちになり、もう機を織る必要もありませんでした。

市場で売られた網は鬘となり、病気で髪が抜けた人、若づくりしたい婦人、こっそり教会を抜けて世俗の世界を楽しもうとする尼に、買われました。

しかしその鬘を点けた人は自暴自棄な恋愛に身を落とし、誰ひとり幸せになれないのでした。

 

数え切れぬほどの男をかどわかし、鬘を出回らせた末、ある時、娘は髪が伸びなくなっていることに気付きました。

不思議と穏やかな気分でした。

それは恋の欲望の終わりでもあったからです。

心が洗われたような気分の中、目を閉じ、娘が思い浮かべるのは初恋のあの青年でした。

「ああ、あの人を思うあの時の私が一番美しかった。そしてあの時の髪も……」

娘は納屋へ走って行きました。果たしてそこには、あの時切られた髪がまだ、打ち捨てられていました。

娘は泣きながらそれを集め、機織りにかけ、小さなかごを作りました。ちょうど赤子ひとり入りそうな、小さなかごです。

「父が誰かは分からないけれど、この子は間違いなく私の子。初恋のあの人との子だと思って、しっかり育てよう。私はもう恋の欲が尽きた。これからは母として生きよう」

そう、娘はみごもっていたのです。

 

そして月日は満ち、子供が生まれました。

とりあげた産婆はぎょっとして悲鳴をあげました。

生まれた子は、自分の背丈と同じほどの漆黒の髪が、生えていたのです。

産婆や母が見ている前でその髪はまるで生き物のようにぐるぐると赤子の首にまきつき、締めあげました。

赤子はあっという間に死んでしまいました。

その髪はしゅるしゅると動いて、悪魔のしっぽに生まれ変わりました。

悪魔は言いました。

「どうだい。髪を見せびらかしたいと言う君の傲慢な心根が、不幸の原因だったのさ。それからこの子はもらっていくよ、約束通りね」

悪魔は赤子を抱きかかえるとあっという間に消えてしまいました。

娘の耳に、あの時の約束が蘇りました。君がそこから生み出したものの中で一番出来が良くて複雑なもの……あの時悪魔は機織りでなく、私の腹を指さしていたのだ。

恋も子供も失った母は、その場に崩れ落ちました。

 

 

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おつかれー っていか20分ほどオーバーしてしまいました……ごめんーでもどうでもいいよねー2700字もあるから許してね!(!)

 

 

グリム童話調だねーレイシブサワのオハコでもあるね なんか知んないけど「基礎練」ではSFめいた話が思いつくことが多かったから真逆のが書けて楽しかった!

「(女の)髪に性的な力が宿る」とか「悪魔と契約したものは絶対にしあわせになれない」とか、民俗ストーリーのお約束を地で行く感じ感。

そしてガッチガチの勧善懲悪観。(だいたいの場合童話の主人公って、罪以上の罰が与えられる感じがして腑に落ちないよね。これもそうだけどさ)

 

レイシブサワモストフェイバリット自選短編は「platonic love, plastic love.」なんだけどこれも童話調。

これはオスカー・ワイルドの「ドリアン・グレイの肖像」を読んでた時インスパイアされたのでした。

そしてオスカー・ワイルドと言えば童話集「幸福な王子」が秀逸すぎるよね。何度読んでも涙腺決壊。ドエモ過ぎる。

人間の男に恋した小鳥が、男が好きな女に贈るドレスを買えないのを見かねて、女神さまに頼んで自分の心臓の血で染めたドレスを作ってもらう話が、好きだな〜 幸福の王子もそうだけど、見返りを求めない愛の話が多い気がする

 

 

 

グリム童話も大好きです!! 多分全部読んでる自信がある。

まだまだチャイルドだから童話とか絵本とかだぁ〜〜いすきっ★☆


……っていうか、やっぱ童話やら神話って骨と筋肉しかなくて贅肉の無い、まじでストイックな「物語の骨子」みたいなもんが、簡単にのぞけるから、モノカキは童話読まない手は無いと思う。そんなんレヴィちゃんとかみんな言いまくってることだけどね

小説の基礎練4: 蔦屋 一郎 (お題:ビデオショップ)

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小説の基礎練です。詳細はリンク参照。

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その少年がバイト先のビデオショップに現れ始めたのはいつごろだったろうか。

白いポロシャツに短パン、という、どこかの幼稚舎の制服のような格好で、いつもひとりで現れては、大量のDVDを借りて行った。

『アイ・アム・サム』『愛人』……そう彼は洋画の棚から五十音順に持てるだけごっそり抜き取っては、レジに置くのだった。

洋画マニアの両親のおつかいだろうか?

レジを打ちながらいつも、僕はそのこの会員カードのナンバーがとても若いこと、そして名字がこのレンタルショップの名と同じなのが、気にかかっていた。

普通の人なら一週間寝ずに観続けないと観切れない量を借り、絶対に延滞せずに、一週間後に返し、そしてまた同じ量を借りて行く。

『ワールド・イズ・ノット・マイン』『ワーテルローの戦い』

彼によって洋画の棚が全て食いつくされ、しばらく彼の姿を見ないと思ったら今度はよく似た青年が現れた。

白いポロシャツに、のりのきいたスラックス、まるでリカちゃん人形のボーイフレンドのようなさわやかな青年は、アニメの棚を片っぱしから、文字通り、五十音順に借りていった。

ぞっとしたのはそれだけでなく、あの洋画の少年と、会員カードの名前が同じだったこと。のみならず、会員ナンバーまでも。

本人が一瞬で育ったのかと思っておののいたが、よく考えたら兄弟でカードを貸し借りしているのだろう。

それにしてもあの爽やかな青年が真顔で『ああっ女神さま』や『アンパンマン』を借りていくのは、滑稽を通り越してこの店を侮辱されている気がする。

それとも彼はものすごく真面目なアニメオタクなのだろうか。卒論の題材がアニメの大学生だろうか。

 

彼がアニメの棚をコンプリートしてしばらくして、次に来たのは同じ顔の中年の紳士だった。

二人の父だろうか? 相変わらず同じ会員証を使ってくる。彼がとりつかれたのはホラー・バイオレンスの棚だった。

もうTポイントカードだけで家族全員しこたま焼き肉を食べれるくらい、貯まっている。

幸福そうな家族に囲まれたあんな紳士が、夜な夜な血の出る映画を見漁っていると思うと、気が知れない。

 

彼が店にあるグロい映画を全て観尽くした後、次に現れたのは老人だった。

紳士のお父さんだろうか。あろうことか彼はアダルトコーナーを、律義に五十音順に借りていくのだった。

この歳になって女体に目覚めたのだろうか。しかしロリでも熟女でも人妻でも、見境なくなんでもいいのだろうか。

 

老人がアダルトコーナーを完食し、しばらく姿を見なくなったある日、深夜の店締めを終えたところに、上等なスーツ姿の男がろあの老人の肩を抱いて現れた。どういうことだろう?

店長がうやうやしくスーツの男に話しかける。どうやら本社の上役らしい。

「見るかね、我が社の秘密兵器」

そう言うと上役はにやりと笑い、老人の肩を勢いよくパンと叩いた。

すると老人の口はパカリと開いてスピーカーが飛び出て、両目からはビームが出て、店の白い壁にスクリーンが投影された。

洋画、アニメ、ホラー……カテゴリ化された映画のタイトルが映し出される。まるでDVDメニューのようだ。

腰を抜かした僕にスーツの男が言った。

「この店の棚がビデオからDVDに変わったのは、坊ちゃんがまだ小学生の頃だ。

我々はソニーから新メディア開発KTRの知らせを受け、いち早くそれを実験したのだよ。このじいさんがそう。

人間の脳は普段5%しか使われていないと言われる。これからは生体記録媒体の時代。人間の脳を開花させれば、この店中の映画を記録することも可能なのだ。

どうだ、このじいさんを客に貸せば、どんな映画も見放題。それだけでなく家事や仕事も手伝ってくれる。

店にとっても、ビデオがDVDになった時とは比べ物にならない省スペース、省コスト!」

「さすが常務、先見の明があります」

店長がほめそやした。

「もっともこいつ、正式導入する前に、すぐに老いてしまう点だけを克服せねばならないが……。何千人もの人生を観せた分、しなびてしまうのも人一倍早いのか」

「しかしそのほうが“語り部”らしいでしょう。KTRという商標はそこから来ているのでしょう? 語り部は昔から老人と、決まっています」

「ワッハッハ……しかし正式導入するなら若くてかわいい女の子に限るな。こんなじーさんでアダルトなんか再生する気も起きん」

腰を抜かしたままの僕は顔から血の気が引いていくのが分かった。

ぞっとした。

クローンか人造人間か知らないが、この人は全ての映画を観る代わりに、自分の人生を生きられずに老い、他人の人生を再生するだけの余生なのだ。

 




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なんか無理があるけどまあいいや! 

昔から図書館やビデオショップに行くと、「一本くらい、誰も借りたことの無いやつがあるんじゃないか」とか「全部読まれてるんだろうか」とかよく考える。

倉橋由美子さんの小説(たぶん『大人のための怪奇掌篇』)に、図書館の本を読みつくす人の話があった……と思う……なんてことを考えながら書きました

 

わたくしにとってはビデオショップも図書館も本屋もブックオフも気が狂うほど嫌いな場所です

なぜかというと検索が下手すぎるから。歩いていて望みのものが見つからないとどんどん不機嫌になる。

そして特に特定の商品を探すわけでもなく、ブラブラ棚歩きまわりながら良さげなものを見繕う、という作戦が成功したためしがない、うろうろ疲れてイライラして終わる

 

DVDレンタルは、近くに店が無いというのもあってツタヤオンラインで済ませていますなにこれー超便利ー予約もできるしー!!

中古漫画はアマゾンで買ってます。だってブックオフの棚、出版社別なんだもん……見つけらんないんだもん……

 

 

 

うーんしかしちょっと悔いが残るな〜いや〜2時間でオチのある話を一本書くってのが大目標で、ボツにしたアイディアに固執するのはフェティシズムなんだけど

 

同じお題でもう一本書こうかな〜 ?!!?

小説の基礎練3: 二十四分の二十五 (お題:INSOMNIA)

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小説の基礎練です。詳細はリンク参照。

 

 

 

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法律により、千人以上の従業者を抱える企業は、専属の産業医を置かなければならない。

その産業医に、ある社員が受診しに来た。

「眠れないんです」

「いつからです」

「今月の一日から」

今日は八日だった。

「その日に何かきっかけがあったわけではないんです。いつもは全く規則正しく眠れるのに、その日はいつもと同じ十二時に床についても、一時間ほど、布団の中で目が冴えたまま眠れなかった。次の日にはそれが二時間。その次の日には三時間……。今日は全く眠れませんでした。仕事があるので昨日までは何とか無理矢理八時に起きて仕事に出ていたのですが、今日は八時になった瞬間にやっと眠気が訪れて……。ついに仕事を遅刻してしまいました」

「それでこちらを受診されたのですね」

「はい」

産業医は社員の首元のハッチを開け、強いライトを照射して中を覗きこんだ。

「人間の体内時計は本来二十五時間、それを太陽光を浴びることにより二十四時間に補正して生活していると言われています。あなたがたアンドロイドも、人間をモデルとしている以上体内時計は二十五時間に設定されており、内部に補正器官も持っています。まれに、その補正器官が働かなくなる方がいらっしゃいます。二十五日まで有給休暇をとってください。二十六日に再び受診してください」

「でも、そんなに急に休んだら仕事が……」

「これは医師命令です。あなたの上司には私から直接打診しておきましょう。あなたは自宅でゆっくり休んでください。外出せず、カーテンを閉め、常識的な昼夜の概念にとらわれずに好きな時間に睡眠をとってください。そして、就寝・起床時刻の記録をとることだけを忘れずに」

 

上司は、部下の突然の休暇に戸惑いと苛立ちを隠せなかったが、医師の命令とあれば逆らえず、休暇中には他のアンドロイドを派遣会社から派遣してもらうことを人事課に依頼した。

替わりの社員が入ると聞いた社員は、安心し、ゆっくり休養した。

 

二十六日、晴れやかな顔で社員が受診室に現れた。

「どうですか」

「とてもいい気分です。なんせ二週間以上ぶりの外出ですからね」

医師は社員に、就寝・起床時間を書いたメモを見せるよう指示した。彼のサイクルはやはり二十五時間でまわっており、他の人より一時間多い一日を、他の人より一日少なく生きたことになっていた。

「予想通りです。昨日は十二時に就寝し、今日は八時に起きられていますね」

「はい。あの不眠の時の不調が嘘みたいです。今日カーテンを開けた瞬間の気持ちよさといったら。太陽の光がすがすがしかったこと! やっぱり、お日様の光を浴びてまともに生活するのが一番ですね。外に出ないのは不健康です」

医師は再び社員の首元のハッチを開けた。バチン!! と大きな音がして社員の目から光がほとばしった。

「いきなり何をするんですか」

「例の補正機能をONにしました。これで今日からは皆と同じ、一日二十四時間で生活できますよ」

 

後日。社員は不満な顔で上司に問い合わせた。

「あの、先月分の給料が振り込まれていないのですが。二十五日に振り込まれるはずですよね」

上司は皮肉な顔で笑った。

「今月の振り込みは、無いよ。いいじゃないか、だいぶ休んだんだし。君の替わりに、急場に派遣会社から派遣してもらったピンチヒッターも、だいぶ高くついたものだからね」

唖然とする社員の肩を上司が笑顔で叩いた。

「それに君には、今月の二十五日は“無かったんだろう?」

 


 

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お題は「INSOMNIA」。難しそうで案外簡単でした。

 

「小説の基礎練」をしていると、何しろ時間が無いので笑
(制限時間二時間! でPCに打ち込んで完成! まで!)、

思いついたアイディアを即採用して書かないといけない、

そのためいろんなジャンルを書かされるのが楽しいです、否応なしに笑笑

 

今回はSFチックですねー星新一のショートショートは大好きで中学生の時に全て読破しました。


それから、二三年前に読んだジェイムズ・ティプトリー・ジュニア「愛はさだめ、さだめは死」に収録されている「断層」という短編が最近妙に頭にひっかかっていたのですが、今回それが引っ張りだされてきたような気がします

 

「断層」は、

あるカップルが宇宙旅行した際宇宙人に怪我をさせてしまい、その刑として何らかの処置をされたのだが見た目は無傷、地球に帰ってもその刑が何だったのかさっぱり分からない。しかしそのうち、女の方だけまともに生活出来なくなっていく。どうやら彼女だけ時間軸をずらされ(slip)、普通の人と同じ時間軸で生きられなくなってしまったらしい、彼女が見ているのは常に今より数分前の世界、今話しかけても返事が来るのは数分後。そしてもっと時間がたてばもっとslipしていくらしい……

とかいう話だったと思う……(うろおぼえ)

遅れた時間の檻に独り閉じ込められた地球人の超絶孤独よ。そしてラストがまたエモい。激エモ(だったと思う)

 

そして何より表題作「愛はさだめ、さだめは死」が激エモ。腸を貫通するほどの名作。

このタイトルは秀逸過ぎると思うんだけどタイトルに勝る内容の素晴らしさ。

30ページかそこらなんで是非とも読んでみてほしい。私は5回以上読んでいる。


SFって滅多に読まないんだけど(いろいろとルール作法があって難しいから苦手笑)、
SF的なギミックと、
愛やらジェンダーやらってテーマは意外と好相性だから、
ものすごい好きなSF作品っていうのは、結構あります。
 

というか、大好きな作品が、ジャンルとしてはSFに分類されてて意外だった……てことはよくある。

 

ちなみに世界で一番好きなSF作家はカート・ヴォネガット・ジュニアです。

「タイタンの妖女」に出てくる水星在住のボアズさんが、

渋澤モウスト・フェイヴァリット・バンド「SuiseiNoboAz」の命名由来なんだよ!(あっそう)

 

 

 


ブログに固有名詞入れるとアクセス上がるんで、好きな小説やらバンドのタイトルを無理矢理沢山いれてみました。はいおしまい。

小説の基礎練 番外編: どうぞおさきに 

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twitterで流れてきた @noki_jimusyo さんの【小説書きさん向けSS企画】にあわせて書いてみましたー!


 

まずはご一読を。

 

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「どうぞおさきに」

著者:渋澤怜

一次創作・CPなし

 

 

Aは、何かに追われる夢を見て怯えるようなうめき声を洩らしていた。隣で起きていたBは、これはいけない、と思って、Aの肩をゆすった。

ねえ、大丈夫、すごくうなされてたよ。

夢を見てたの。今よりずっと、小さい頃の自分に、追われている夢。

小さいって言ったって、今だって十分小さいじゃない。もっと小さかったら、見えないんじゃないの?

そう、ほとんど見えない、まだ遠くにいて、豆粒くらいにしか見えない、でも、一ヶ月目の自分だって、分かるの。それが、じいっとこっちを見ていて、ゆっくり追いかけてきて……すごく怖いの。

変な夢。一か月目の赤ん坊なんて、お母さんにだってお腹にいることに気付かないくらいじゃない。自分だって、自分かどうか分からないくらいの頃じゃない。

 

次の日も、その次の日も、Aは自分に追われる夢を見た。しかし日を追うごとに、夢の中の自分はだんだんと育ち、力もつき、Aはだんだん逃げるのが苦しくなってきた。夢を見ながら洩らすうめき声も、どんどん深刻なものになっていった。

 

ある日、激しい叫び声をあげて目覚めたAは、Bに言った。

もう、ほとんど今の自分と同じくらいの大きさになった。怖いよ、明日はきっと、追いつかれちゃうよ。

明日なんてもう、私達半分お外に顔出してる頃じゃない。そんなに怖いなら、どうぞお先を譲りますから、先にママに会ってくれば?

何さ、もういいよ、本気にしてくれないなら……。そっちこそ、ママのお腹に取り残されちゃえばいいのに。

 

そして次の日、やはりAは自分に追われる夢を見た。予想通り、今の自分とぴったり同じ大きさにまで成長した自分は、力も全く同じで、ついにつかまってしまった。凍りつくような恐怖が、掴まれた右腕から全身を駆け巡った。怖くてその腕から目を離せないAは、しかし、気付いた。自分をつかんできた自分の左腕の親指の付け根にあるほくろは、自分には無いものだった。片割れと自分を見分ける唯一の違いが、そのほくろだった。

お別れを言いに来たの。

片割れはしゃべった。

お別れ?

そう。お母さんは、本当は一人の子しか望んでいないの。私聞いちゃったの、あなたが寝ている時に……。一人しか産む気が無いのに、二人も身籠ってしまった。うちの家計でやっていけるのかしら。しかも、もし二人とも女の子だったら、お嫁の支度だけで家がつぶれてしまう。もし二人とも女の子だったら、生まれてすぐ、情も移らないうちに、片方を里子に出してしまいましょう、って……。私、あんたがいない世界なんて生まれる気も起きない。だから、先にあんたを行かせて、自分はへその緒でも首にまいて死んでしまおうと……。

そんなの嫌だ。私だって、あなたのいない世界なんか、生まれる前に死んでやる。

そうでしょうね、だって私達、双子だもの。同じことを考える。フフフ、私ってずるいのよ。だからあなたに黙って、いい方をとってしまおうと思ったの。片割れに会えない痛みに耐えて生きる方より、先におさらばしちゃう方が、いいものね。あんたが見た夢は、きっと走馬灯みたいなものね。なんで片割れの走馬灯を見るのか、不思議だけど。

だからあなた、私が夢の話をするとバカにしたのね。気付いていたのね。

そう……、赦してね。シラを切るにはああいう風にしていないと……辛くて。

赦すわ。でも、一人で死のうとしたのは赦さない。一緒に連れてってよ。

でも、もう間に合わないわよ。私、あなたを産道に蹴り出しちゃったもん。

まだ戻れる。二人一緒と嫌だ。

そうね、私達、双子だものね。

 

その日、互いのへその緒を噛み切った双子の死骸が、産み落とされた。

 

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実はこれ、プロット縛りです。

「以下のプロットを元にSSを作成しなさい。」というお題のもとに、

みんなで短編小説を書きましょう、という企画なのです!

(詳細こちら→ http://hp.kutikomi.net/tankyu-jimusyo/?n=column23

 


【起】追われる夢を見るA。
【承】Bに起こされる。
【転】夢の話をするとBが笑い、Aが拗ねる。
【結】仲直り

 

いんやー難しかった。今月で一番頭使った

 

特に転「夢の話をするとBが笑い、Aが拗ねる」→結「仲直り」。なんか、こう、BL誘発な……笑笑

 

でも普通にごめんね、って言って仲直りしただけじゃつまんないから(←良質なBLならそれこそ良いのかもしれないが)(そういうの書けないんで)、

なんかヒネリを加えないといけない。

Aの夢が正夢になってバカにしてたBがあやます、とか、Aの予知夢のおかげでBが窮地を救われる、とか……?

なんにせよ転と結には時間的インターバルを置いた方がよさそう

 

そして起「追われる夢」。

なんかイミシンだからいい感じに使いたい……

夢判断サイト見たら、追われる対象のことを嫌っているのではなく実は好いている場合がある、とのこと。でも「好いている」という事実を、意識は認めたくなくて、葛藤が起こっていると。ふーん(いろいろ考えたが結局ボツ)

あとは自分自身(A)あるいは、Bに追われる夢ってのもアリだなと思った

 

あと、承が「Bに起こされる」だから、ABと同一空間で寝てないといけない。

となると、恋人? きょうだい? 寮のルームメイト? あるいは保健室で寝る生徒と保健室の先生……?!

なんにせよ場所と関係は制限されるね

恋人はありがちだからきょうだいにしよう、と思って、変わった感じにしたいなと思ったら胎児という結論に至った

そこで、自分自身(A)に追われる夢だと思ったら実はBだった、という路線を採用して、じゃー双子にしよう

 

 

……とかなんとかやってたら半日くらい経ってた!! うひいひいぜえはあぜえはあ

 

 

非常に面白くてためになりました。ウルトラ難産だったしまだ産み残した感はある……!

企画主の @noki_jimusyo さん、素敵な企画をありがとうございました……!

 

 

RayShibusawaの余談コーナー!
双子と言えばアゴタ・クリストフ「悪童日記」は世界一の双子小説! いや、もしかしたら世界一の小説かもしれないよ。

ブラックとか残酷という言葉さえ褪せるほどの、その向こう側に言った透徹な無生物感。

戦中の東欧、機械みたいな非情さを得ようと鍛錬に励む、双子のお話です。

 

小説の基礎練2: 残さず食べなさい (お題:マニキュア)

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「小説の基礎練習」です。詳細はリンク参照。



 死別した母のかわりに父が新しい母と結婚したのは、僕が中学二年生の時だった。

 学校の一番若い女の先生と同じくらい若かった。明るく染めた茶色の髪をゆるく巻いていて、顔中から粉の匂いがただよってきそうなほど、ぽってりとした化粧をして、桃色の口紅、そしてそして何よりも怖かったのは爪、爪だった。

 何かの武器のようにすっくりと伸びて、人工的なアーチ型に揃えられた爪からは、揮発性の塗料の匂いが鼻をつくかと思うほどに、ぼってりと分厚くマニキュアが塗られていた。

 僕はそれを見ていると目に刺さりそうな気がして、目を逸らした。

 

 その日その母が作った初めての夕飯は、カレーだった。食卓に向かい合う父と僕、張り切って台所に立つ新しい母。僕は正直、昔の母が立っていたその場所にまだ新しい母を迎えたくなかった。三人で、というより、父と母が楽しそうに談笑している中でふと目に入ったのは玉ねぎを剥く母の、玉ねぎの皮そっくりな、つややかに光るシャンパンゴールドの爪。僕は急速に食欲を失い、具合が悪いと言って自室に引っ込んだ。

 

 次の日の夕飯に母が作ったのは、長ナスの揚げびたし。すべらかな長ナスに沿う母の指先の、タマムシのように光るパープルの爪。僕は吐き気がこみあげてきた。また自室に引っ込んだ。

 

 その次の日、母が夕飯に作ったのは、肉じゃが。ニンジンの皮をピーラーで丁寧に剥く母の指先は、ニンジンの色がべったりと映ったような、キャロットオレンジだった。僕はまた席をたった。さすがの父も、新しい母になじめずナイーブになっているのだろう、と、僕を許してはくれなかった。おい、と呼びとめられたところで僕は胸まで胃液がこみあげてくるのが分かって、慌ててトイレに駆け出した。

 その日はずっと自室のベッドで寝ていた。父が来たが無視した。

 

 早い時間に寝たため深夜は目が冴えて眠れなかった、そんな時扉を開けて忍び込んできたのは新しい母だった。私がキライ? 僕は寝たふりをした。母は布団の下へ指を潜り込ませてきた。僕はまだ寝たふりをしていたが、そこは起きていたので、隠しようが無かった。近づいた母の頭からは、シャンプーやら乳液やらの、女の匂いがした。母はまるで野菜を扱うすべらかな手つきで僕をも扱い……、夢だったと思いたい。しかし翌朝、隠しようのない自分の体液の匂いにまみれて目覚めた時、僕は、部屋から出ないことに決めた。学校にも行かず、父母の呼びかけにも応えず、引き籠った。その日、母は家を去った。

 

 僕は、記憶が擦り切れるほど、その時の思い出を呼び覚ましては、自分で自分を慰める時に使った。いつしかそれ以外では出来なくなっていた。自分で購入したマニキュアを自分の爪につけ、自分の手で行うのでは飽き足らず、最近はその手の店へ行って、女性にそれをつけてもらっていた。

 

 二十四歳の誕生日、独立して一人で暮らす僕の元に、父が死んだという知らせが入った。電話口の母の声はいまだ若く、生々しかった。

 その日夢を見た。今夜はラタトュイユよ。エプロンをした母のまな板の上に、僕の男性器が置かれている。包丁が振り落とされ、ナスやニンジンと一緒に、輪切りにされて、鍋へ放り込まれる……。

 

 自分の叫び声で目が覚めた。真夜中だった。父はもういない。もう、母と僕を隔てるものは無い。母につかまってしまう。包丁を持った母が、爪を尖らせて、追いかけてくる。恐怖にせき立てられた僕は、月の光に照らされてつややかに光るマニキュアボトルを開けて、片っぱしから口に流し込んだ。ナス、トマト、ニンジン……、胃の中に栄養たっぷりのいろんな色が流し込まれ、混ざっていく。マニキュアって、何本飲んだら致死量なんだろう? 大丈夫、自分の欲望の数だけ、数え切れないほどのボトルがまだある。

「残さず食べなさい」

七色に光るよだれを垂らしながら、昔の母か、新しい母か分からない声を、頭の中で聞いた。


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・時間オーバーしてるかも! ごめん! 
 だって邪魔が入ってしまって時間分かんなくなっちゃったんだもーん でもそんなことどーでもいいよね!

・マニキュアって言ったらエロい話以外思い浮かばないよね!(!)

・「マニキュアした手で料理しないでよ気持ち悪い」という生理的直感をモチーフに、それを膨らませて書きました。

・他には、校則が厳しい学校でこっそりペディキュアをして登校して独り悦に浸る女子中学生、っていうのも思いついたけどボツ(続き思い浮かばなかった)

・山田詠美の「ひざまずいて足をお舐め」っていう、
半自伝半虚構的小説があるんだけど、
それに、「継母から受けたイジメが忘れられず、お○んちんに針を刺してもらわないと興奮できない」と懇願する男性がSMクラブに来る、というエピソードがあって、
それが忘れられず、大いにイメージを拝借したと思います
だってそんなの忘れられないじゃーん!!! しかも実話かもしれないって思うとなおさら。

ちなみにこの小説メッッッタクソ面白いので超オススメです。

・あと、食欲と性欲のグロテスクな連関っていうと、ヤン・シュヴァンクマイエルが大好きです。
言いたかっただけです。

小説の基礎練1:恐怖の鬼ごっこ大作戦 (お題:鬼ごっこ)

JUGEMテーマ:自作小説


「小説の基礎練習」 です。ルールはリンク参照。



俺達はサッカーゴールの中で退屈を持て余していた。
7月の校庭は暑い。じりじりと、太陽が近づく音がする。太陽が俺たちを殺そうとしている。

「なあー、暇じゃねー? 鬼ごっこって。捕まったらこうやって牢屋でジーッとしてるだけだし」
「なー、暑いしなー。せめて元から鬼だったら木陰でダラダラできるのになー」

今日の鬼は1,2班。3〜6班は逃げる役。
秀二と俺はさっきまでその木陰で出来るだけ見つからないよういたのに、レクリエーション係のリーダーにあっさり見つかり、つかまってしまった。
そもそも昼休みにレクリエーション係とやらが仕切って全員参加で遊ぶ方がおかしい。昼「休み」なんだから好きにさせてほしい。だとしたら秀二と俺はこんなあつい校庭なんか居ずに教室でバトルエンピツをやているだろう。
担任の体育教師の八島のせいだ。
昼休み、あまりに教室に残った子供が多かったのが気に入らなかったのか、「子どもは外で遊ぶのが基本だ」とか言って俺たちを無理やり外に出すためにレクリエーション係を導入して俺らの自由を奪いやがった。

「つかまったらこーしてるだけで運動になんねーし。八島のバカー。熱中症になるだけだよ」
「でも牢屋にタッチしてくれたら解放されるってことになってるじゃん一応」
「でもこー鬼が見張ってたら誰も助けに来てくれないし」
「そーそー」
そーそー、と言ったのは、レク係のリーダーの鮫島だ。リレーのアンカーだったあいつが見張っている限り、たとえ仲間が俺達を助けに来てくれても返り討ちにされるのがオチだろう。

「鬼ごっこ作った奴ってバカだよなー。結局全員鬼になるだけ。逃げる方が勝つなんてありえねーじゃんつまんねーあちーどうにかしてくれよー啓一」
「せいぜい耐えるしかないな」
鮫島が言う。ウザい。

「なあ……それなんだけど、鬼ごっこって、なんで鬼ごっこって言うか不思議じゃね?」
俺は言った。
「確かに……別に鬼のマネしてるわけじゃねーし。……考えたことも無かった」
「そこなんだけど、こういう話知ってるか? 
昔、ある村に怖ろしい病が流行した。
その病に感染すると、皮膚は赤く腫れ、木の幹のように硬くなってイボイボが出来、そのイボイボはやがて目、鼻、口をまともに開かなくしてしまい、死んでしまう。
それはまるで鬼のようだったから、”鬼病い”と呼ばれていた。
それは患者に触れることで感染した。
治療にあたった医者に真っ先に感染し、治せる人間がいなくなった村はパニック状態になった。
患者は村の隅に位置しているあばらやに隔離され、まともに食事も与えられず……死ぬしかなかった。
村人たちは患者たちを殺そうとしたんだ。
患者ごと殺すしか、病気を撲滅する方法が無かったからね。
殺されると気づいた患者は、恨みが爆発し、夜中にあばらやを抜け出し、村人たちを襲った。
自分達を見殺しにする奴らなら、道連れにしてしまおうと思って病気をうつしたのさ……。
それが“鬼ごっこ”の始まり……」

「やめろよそういうの」
とサッカーゴールの外の鮫島が言う。隣の秀二が唾を飲み込む音が、俺にも聞こえてきた。

「それでが、時代とともにその怖ろしい昔話は忘れられ、いつの間にか子供の遊びになっていた……。
だからこのゲームは全員鬼になって終了するしかないのさ。それがあの村の運命だから」
「ヒー!! 怖いからやめろよもーそういうの!!」
耳をふさいで叫んだ秀二を尻目に、俺は同じ班の古川さんが俺たちを救おうと茂みに潜んでいることに気づいていた。
俺は目配せを送る。

「それで、忘れられた鬼病いの患者たちの霊が、今でも忘れ去られた恨みで呪ってくるんだ。
それは、捕まった人間の牢屋を監視している鬼役の子供の背中、けっして自分では見えないところに、赤いイボイボがゆっくり広がって……痒くてひりひりして仕方無いのに、自分では手が届かなくてうまく掻くこともできない。
そして鏡でも見ることができないうちに、どんどん広がって……」

「なんだよ、そんなの信じねーよっ!!」
鮫島が叫んだが声が少し震えていた。

「あ、でも、鮫島君、Tシャツの後ろのところに赤いしみがついてるよ、血じゃない? 見てあげるからこっちきて」
俺は鮫島のTシャツのすそをめくった。
「うわー! ブツブツが出来てる!!」
「えー! 怖えー!! 呪いだー!」

「え!! ちょっとよく見せろ! 離せ、離せったら!!」
俺はTシャツの裾をガバッとめくりあげ鮫島の頭に引っかけた。
「おい! 前が見えない!!」
そこへすかさずやってきた古川さんにタッチしてもらい、僕らはまんまと牢屋と出た。

「どう? ちょっとは背筋が涼しくなった?」
全力で逃げ出し、さっきの木陰にたどり着いた古川さんと秀二に言った。
「え? さっきの嘘?!」
「まだ気づいてないのかよ、鮫島をハメるための作り話さ」
「えー! そうだったのー!? あーもー信じちゃったよーそれならそうと早く言ってよー」
「敵を騙すにはまず味方からさ。鮫島みたいな脳みそ筋肉系には頭脳戦で勝負さ」

隣の古川さんがくすりと笑って言った。
「吉田君て頭いいんだねっ」
よし。僕はほくそ笑んだ。

その後、レクリエーション係のリーダーだった鮫島は鬼ごっこを絶対にやらなくなった。そして鮫島がその気でなくなったため、だんだんレク係の士気が落ち、次第にレクは無くなり昼休みに自由が訪れた。クラスの大半はインドア派、もとからレクなんてしたくなかったのだ。
しかしもしかしてまだ信じてるのかなあいつ。だとしたら本当バカだ。


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当時から生粋のインドア派で体育嫌いだった私の、
運動出来てクラスの中心なリア充クラスタへの恨みを存分にぶつけてみた。

鬼ごっこで捕まると退屈だったよね。サッカーゴール、牢屋に使ったよね。