小説の基礎練10: デブフォン (お題:携帯電話)

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小説の基礎練です。詳細はリンク参照。


 

携帯電話はもはや携帯電話ではない。

電話だけでなくメールができる。すぐに電話がつながらない相手にも連絡ができる。

ウェブも見られる。地図も見られるから、初めての場所でも迷子にならないし、位置情報をつけて瞬時に居場所を知らせることもできる。

 

年老いた人は言う。

「携帯が無かった頃は、事前に待ち合わせ場所と時間をきっちり決めて、それでも会えないことがよくあったんだよ。同じ駅の隣の出口で待っていて、すれ違ったり。むろん遅刻なんてできなかった」

 

今はどうだろうか。むしろ約束なんかつけなくても「新宿なう」と呟けば、いや、位置情報つきのツイートをSNSに送るだけで、近くで暇な友達をひっかけることができる。

 

天気予報も分かる。位置情報がついていて、台風や地震が近づくとアラートが出る。

音楽も聴ける。好きな音楽を覚えこませれば、自動的におすすめの音楽のダウンロード先を紹介してくれる。

 

年老いた人は言う。

「昔はインターネットが無かったから、情報を集めるのが大変だったのよ。

テレビか、口コミ。自分でどうにかするしかなかった。

音楽なんて、テープを回していたんだよ。youtubeitunesも無かったし。

今は機械が勝手に教えてくれるんでしょ、おすすめの音楽を」

 

料理レシピも見られる。作った料理を記録でき、栄養が偏っていると、それを補うメニューを教えてくれる。

携帯を持ってランニングすれば、カロリーや走った距離を記録してくれる。

心拍数や体温を自動で測定し、毎日記録し、異常があればかかりつけの医者の携帯にメールがいく。

ディスプレイと目の距離が近すぎると、自動的に文字サイズが大きくなり、コンタクトレンズの処方が眼科へ送られる。

「昔は大変だったのよ。年に一度、健康診断というものがあってね。それは面倒だった。

今は医者の方から呼んでくれるのね」

 

クレジットカード、銀行のカード、薬局のポイントカード、保険証等をスキャンし、保存してくれる。更新期限やパスワードも管理する。

「昔はお財布の中が、カードだらけだったのよ」

 

人々はどんどん携帯を信用していく。

その場で連絡をとればいいから、待ち合わせ場所をいちいち決めない。

おすすめのバンドの名も、お気に入りのレシピも、携帯を見れば分かるからいちいち覚えない。

自分の健康状態も携帯が管理してくれるから、気を払わない。

 

携帯を落として、心神喪失状態になる者が出る。

これだけの個人情報が入っているのだから、悪用されたら致命的だ、という怖れより、携帯が手元に無い不安感のあまり、我を忘れてしまうのである。

小中学校での生徒の授業中の携帯使用、国会での議員の携帯いじりが問題となる。政府は両者を認める。

携帯を手に持っていない時の手の震えが国民病となる。

民間の携帯会社が、利き手と逆の腕に携帯を埋め込む技術を開発する。政府は追ってそれを許可する。

すると埋め込まれた携帯を他者に破損された場合の法的処置が問題となる。

携帯は身体か、否か。

「脳死は人の死か否か」以来で倫理学者が招集される。

最高裁において、携帯を破損することは傷害罪であると認定される。

 

全国民の携帯埋め込みが義務付けられる。

それに伴い、携帯の違法手術や闇取引が問題となる。違法滞在者への中古携帯の埋め込み、ハッキング、犯罪者の逃亡用の携帯書き換えなど。

携帯の機能がますます増える。あらゆる役所の手続きも、携帯から行える。ハンコ、婚姻届などは死語になる。携帯の持ち主が死亡した場合、心拍の停止から携帯から死亡届が自動で提出される。

 

携帯の機能拡張にともなう巨大化により、利き手の逆が重くなる。

利き手の逆側の肩コリが国民問題となる。死者も出る。

民間企業は、頬に携帯を埋め込む技術を開発する。ディスプレイは網膜に直接映し出される仕組み。頬のタッチパネルを触り操作する。政府、これを許可する。

 

人々のライフスタイルが大きく変わる。

病院では、カルテでなく携帯のバックアップをとる作業が行われる。万一携帯が破損した場合に備える。

義務教育の場においては、従来の暗記型ではなく、教科書の情報をいかにうまく携帯に流し込み、すぐ取り出して使えるかという技術を学ぶこととなる。教育者が、フォルダ型と、タグ型等の派閥に分かれる。

 

人間の記憶の携帯依存が進み、人の脳の退化が進む。頭蓋骨も小型になり、もはや小型テレビほどになった携帯を支えきれなくなる。首の骨を折って死ぬ者が続出する。

政府、全国民の顔に携帯を埋め込む方針を決定。もはや誰も、相手の顔など見ていなく、携帯ばかり見ているので、特に異議は起こらない。むしろ互いのディスプレイが見やすくなるので歓迎される。

 

待ち受け画面が、最大のファッション市場となる。

キリスト教の割礼は、新生児の携帯画面についている保護フィルムをはがす行為を指すこととなる。

生殖器によるセックスではなく、互いのディスプレイをタッチしあい、全てのデータを見尽くすことが、最大の性的興奮かつ愛情の印とみなされるようになる。

最高裁において、他人の携帯を破損することは殺人罪と同義という判決が下される。

 

 

 

・・・・・

なんとか二時間でおさまりました。これで「小説の基礎練」ひとまず終了です! わーわー

約二ヶ月で10本……目標より四日のびちゃったけど、完成してよかったー

 

今回のはなかなか気に入っております オチが時間内に思いつかなかったのが心残りだなー……(これでも終わってないことは無いと思うけど)

オチ募集中!(!)

 

iphoneに変えてほぼ一年。

ウェブは速いしtwitterも速い。パソコンのメールも見れるし、mapを開けば現在地が表示された精密な地図が即座に示されるし。

こんな小型の機械で何でも出来るなんて、「マジ、未来、来た!」と思わないわけがない。

同時にこいつに頼ってどんどんアホになっていく危機感も否めない(思い出そうとする前にiphoneで調べちゃうから、早くボケそう!)

そんなアンビバレンスな感情を込めてみました。

 

数十分後にiphone5の発表会ですか? 私にしては珍しく、時事に乗った記事になったな笑

 

小説の基礎練は、一冊の本にまとめて文学フリマで無料配布する予定です!

私個人の感想ですが、「小説の基礎練」は、速く書く練習、プロットを立てる練習、そして筆馴らしに最適だと思います。

同業の方にもやってみてもらいたい、そして他の人が書いたものも読んでみたい……!

 

もし私も基礎練やってみる!(やってみた!)て人がいたら、教えてくださいね……!

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