渋谷の道路は空車のタクシーばかりで、なんだかわざとらしく賑わせてるなあ、と

3回しか曲がらずに渋谷から帰れるようになった。自転車での帰路の話だ。

平日終電後の渋谷は、これほどに? というほどに人がまばらで、住宅街のそれと大差なく、そんな渋谷を住宅街と同じ感覚で車輪を転がして進む。近所から帰るみたいに。

渋谷の車は空車のタクシーばかりで、なんだかわざとらしく賑わせてるなあ、と思いながら併走する。

 

それにしても(終電後はまだしも)(それ以外の時間の)渋谷の磁場の悪さは異常だ。あんなところに毎日通っていたら頭がおかしくなってしまう。

まず狭いし、人種も狭い(新宿は広いし人種も広い)。

そして谷だ。ほぼ渋谷に住んでいる、と言っても過言ではない友人に

「霊は空気より重いから低い所へ溜まっていくんだよ」

と言ったら、信じてた。バッドカルマが溜まってる感じがする。

そして何より、彼の様子が変だった。小金を持ち始めた彼は(持つ前はいつも「金が無い」「〇〇が欲しい」「でも買えない」と言っていたのに)、

「欲しいものが何もない」

と言っていた。

閉店後の店のショーウインドウばかりならぶセンター街はガラスを割って何でも手に入れられる気がしてくる。でもそうなると何も要らなくなる。

金を手に入れて調子に乗って要らないものをたくさん買ってしまう人もいるのに、彼は逆だった。いずれにせよ渋谷になんか住むと物欲がバグる。食べたいものも何もないそうだ。食べたいものが見つからな過ぎて我々は

「こっから歩いて3軒目に目に入った『た行』で始まる名前の店に入ろう」

と言って店を決めた。肉推しの居酒屋だった。街より店の中の方がうるさかった。

 

「ドンキ行きたくない?」

と言われた。

私はドンキに行くと急速に機嫌が悪くなる(渋谷にいるのと同じで、無駄に物欲を刺激されて気持ち悪いし、どこに何があるのかわからな過ぎてイライラする)から、断りたかったのだが、彼がもし明日自殺したとして「あのときああしてやれば良かった」と激しく後悔したくない、というよく分からない理由で、彼の頼みは断りにくかった。(こうやって言葉にするととても気持ち悪いし、その時はこんな理由だとは自覚していなかったが、今言語化するとこういった気分だったんだと思う)。

 

とはいえ、ドンキの空気が耐え難い私は10分おきに3回くらい

「もう帰るわ」

と言ったのだが、そのたび

「お願いだから/一生のお願いだから」

と言われてワンフロア付き合うことになり、結局我々はほぼ全フロア見た。

 

お菓子フロアを巡っていた時、突如ひらめいた様子で彼は

「欲しいもの、見つかった!」

と言った。

「ジェリービーンズが沢山ボトルに詰まってるやつ、あるじゃん」

「外国のグミが量り売りしてるお店にあるようなやつ?」

「そう」

「食べるの?」

「食べない。置いておくだけ。あの全然おいしくない、かわいいだけの瓶がうちに置いてあったら最高じゃない?」

「わくわくする」

 

でもドンキには無かった。

 

「渋谷には何も無い」「超不便」という結論になった。

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