メアドが変だから好きじゃない

評価:
SuiseiNoboAz
SuiseiNorecoRd / Village Again
¥ 1,928
(2010-01-20)
コメント:  

 SuiseiNoboAzを好きだった頃の自分を思い出した。
椎名林檎とクラシックしか聴かず音楽的素養が全くない中、弟の部屋に転がっていたCDをたまたま聴いてドハマリした自分をあっぱれだと思うが、もし私が初めて見た彼が今日の姿だとしたら――高円寺の小さなハコでの弾き語り、酔っ払ってちょいちょい歌詞を忘れ、あえてぶっきらぼうに語尾を投げる――私は彼の歌を好きになっただろうか。
三年前に大森靖子ちゃんを見つけた時も「コレは」と思ったしその感覚を今まで忘れずにいるが、でも三年前と違ってあんなに髪を振り乱したりはしないし叫ばないし援助交際の歌も歌わない彼女を私は今から見つけることが出来ただろうか。
いや、実際、徐々に穏やかで安定性を高めていく彼女のライヴに飽きはじめているんじゃないか? お前は。世界にほんの少ししか無いすごく好きなものに飽きてしまうのはとても恐ろしいが、しかし同時に、少し安堵する。ファンというクソみたいな人種――プレイヤーの一挙一投足に目玉をキョロキョロと反応させ、何を言ってもコロコロと笑い、好きです頑張ってくださいしか言えないのに話しかけたくて仕方無く、ネットでは饒舌に同士しか分かり合えない曲のディテールやライヴレポという名の需要があるか分からない変な文章をまきちらす――に、自分が貶められるのは、すごく耐え難いことだから。

つまり他人にアディクトするのは怖い、ダサい、気持ち悪い。

何を聴いても、誰とエロいことしても好きにならない鋼鉄コーティングしたハートを持って「何を聴いても、誰と寝てもつまらん」と言い倒しながら世界を灰色に塗り潰していく作業はものすごく簡単だ、たったひとつ気に入らないところを見つければいいのだから。歌詞をトばすバンドマンはダサい、わざと貧乏人ぶるのとかイタい、メアドが変だから好きじゃない。
 
本当は何かにアディクトしたいと思ってる癖に、それを許せない自分のつまらないプライドと引き換えに灰色に塗り潰される世界のほうがとんだとばっちりだ。アンテナを鈍らせ続けて自己防衛して、最終的には自分の鋼鉄の中身こそがクソ灰色だったことに、ものすごく近い将来気付くのだろう。
 
ダメでもいい、嫌われてもいい、と心から思っているかのように気持ちよく佇みをキメる彼は子供のように酔っ払っていて、多分私が酒を毛嫌いするのは憧れと妬みも入り混じった感情なのだろうなと思った。そしてクソチューニングの狂いまくったギターは、以前彼が見せていたクソ格好良いバンドでのエレキギターと全く手つきが一緒で、まあまあさすがに人生で一番凝視した手、思うことひとしおで、やっぱり自分はキモいファンなのであった。



コメント

「世界にほんの少ししか無いすごく好きなものに飽きてしまうのはとても恐ろしいが、しかし同時に、少し安堵する」これすごく共感。私もクソみたいなファンだったけど、その間は楽しかったし、アディクトするのは恐ろしいけど、やっぱり楽しいというキモいファンだったのです。他人の一挙一動に振り回されるのは気持ち悪いけど、同時に気持ちイイです。

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