第17回文学フリマ本感想:犬尾春陽「マズロウマンション」~「中二病でも歌詞は書ける!」の話


文学フリマ随一の美人! 犬尾春陽!

 

いぬおんのマズマン!\(^0^)

いぬおんのマズマン!\(^0^)


 

※使用感あり

 

本人が

「自信作過ぎて他の既刊は持って来なかった。これだけ買ってくれればいい」

と豪語するのにノせられて1000円もするのに買ってみたんだけど、

確かに面白かった!

 

前半で紹介される物語のモチーフがとにかく胸躍るものばっかりで、ひたすらエキサイティングなんですよ。

 

舞台は、マズロウの欲望段階説を体現する五階建ての「マズロウマンション」!

その人間の欲望の段階によって入居する階が決定し、

自分より上の階には不思議な力が働いてなぜか登れない! という魔法の館!

 

1階で三大欲求すら満たせず徘徊する魑魅魍魎!

3階で愛に飢えてる女の子!

5階で自己の芸術の研鑽につとめるストイックなピアニスト!

 

階違いの悲恋!

 

そして6階にある管理人室には誰も辿り着くことが出来ないんだけど、

6階ってことは、五段階の欲望段階の更に上をゆく、つまり、管理人は悟り開いてんの? それとも非実在? 幽霊? という謎!

 

「物は投げても身を投げるな」のルールのもと、

自殺しようとベランダから身を投げてもなぜか自分は死ねず、

かわりに自分が命の次に大事にしているものが落ちてしまうというエモい設定!

 

5階のピアニストへの片恋慕に絶望してはウサギを落下させている3階の女の子……

なんてモチーフ選びも素敵過ぎて幾度となく線をひきまくったねー

 

 

とにかくエキサイティングだった!

 

前半は。

 

 

 

が。

 

後半、「実は時間が……」みたいな話が始まるあたりから急に凡庸になるっつうか

おっぴろげたモチーフを使って物語をドライブさせていく段になるはずが

急につまんない消化試合はじめちゃうんだよねー。

 

館の主マズロウ、6階の謎の管理人、5階のピアニスト、3階の女の子、

そして4階の主人公をもちいてなんとか話にオチつけようとゴチャゴチャやってみましたって感じ。

 

前半あんなにのめりこんで読んでたのに、

「お前らの痴話喧嘩とかノロケとかどーでもえーわー」

ってなって、急速に興味を失ってしまった

 

だからその点が非常に惜しかったんですよ。

 

 

 

 

で。

 

あとがきに書いてある通り、

この小説はLIPLICHというバンドのCD「マズロウマンション」の歌詞世界に

インスパイアされて書かれたものらしい。

 

で、「LIPLICH マズロウマンション 歌詞」でググると

犬尾氏のブログがトップに出てくんのね

 

http://sanguria.exblog.jp/18187600

 

 

これ読んで分かったんだけど、

私が前半に褒めちぎったモチーフって

全てこの歌詞の中に登場してるものなんですよねー

 

前半の風呂敷広げる段がすごくエキサイティッドしてた私が、

後半でなぜ興味を急速に失ったかっていうと、

前半の「モチーフおっぴろげパート」と

後半の「ストーリーテリングパート」が合致してないからですよ。

 

極端に言えば、3階と5階の悲恋はマズロウマンションなんか出て来なくても

ただの階級格差恋愛の話としても書けるわけ。

 

マズロウ要らねえやろっつう。

 

マズロウの欲求段階説にもとづいた5階建の「マズロウマンション」

つう神設定を生かすなら

絶対に「欲望」をテーマに据えるべきだった。絶対に。

 

例えば5階のストイック芸術家が堕落して下の階に引っ越すとか(適当)

時がナンチャラつう設定は出さんでえーかなと思った。

 

 

・・・・・・・・・

 

 

歌詞つうのはすごく無責任なもんで、

やっぱ小説より圧倒的に書くのが楽なんですよ。

(メロディに乗せるという難しさは無視して、

「物語世界をいい感じに匂わせる」という点のみに限れば)

 

いわゆる中二病で

「物語の世界観とキャラの設定ノートだけめっちゃ詳しく書いて、

でも小説の本文を書く段には至らない」

という症状があると思うんだけど、

つまりねえ「物語の設定を作る」のはめちゃめちゃ簡単で楽しいけど、

「小説の本文を書く」にステップアップするのは結構大変なんですよ。

 

でも、歌詞を書く時って「設定ノート」だけでも許されるんですよ

 

 

だから、同じくらい「すげー!」と思わせることの大変さは歌詞<<<<<小説。

 

 

まあ前半をエキサイティングに書けただけでも犬尾氏の功績だとも言えるし、

(もちろん歌詞世界だけでは情報が足りないので、犬尾氏がいろいろと設定を付け足しているのだが、それも歌詞世界にフィットしてるし、文体も綺麗で雰囲気出てるしテンポも良く楽しく読める)

 

後半をドライブ出来なかったから犬尾氏全然ダメや―んとも言える。

 

個人的には後者のスタンスだ。

(というのも私はテーマがガツンと伝わる話が好きで、文章の巧さとか雰囲気とかには何の重きも置いていないからだ!)

 

 

まあでも前半読んでる一時間かそこらはマジ楽しかったし、

文学フリマで売ってる本の中では人にすすめてもいい本かなあと思います。

今回の文フリで買った本7冊読んだけど2番目に面白かったんよ。

 

 

 

1番は山本清風の「イカサレ」だ!!

 

 

 

というわけでまたブログ書くね。

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