小説の基礎練17:深夜テンション(お題:深夜番組)

 

小説の基礎練です。ルールはリンク参照。

 




たまに深夜番組なんかを観てしまうとうんざりする。

 

高級羽毛布団、bluerayプレイヤー、ワニ革の黄色い財布、カニ、つけるだけで痩せるマシーン、パン焼き機、青汁……冷静に考えれば絶対要らないもの、でもあればちょっと生活が良くなるような気がするものが、深夜に緩んだ人間の心の隙間めがけて押し寄せてくる。

これは要らない、これも要らない、これはちょっと……うん、やっぱり要らない。こんな大きなマシンどこに置くんだ。それにこういうのは大体作動音がうるさくて、「テレビを観ながら気軽にフィットネス」なんて出来ないんだ。意外と振動したりして階下の人に気を使ってしまったり。機械の掃除が面倒だったり。コンセントが短かくて不便だったり。室内物干しになるのが関の山だ。うん、要らない。

 

僕は自分の心の隙間を狙ってきた商品たちを打ち返しながら満足な気持ちになる。

 

こういう通販番組は非常に辟易することにひとつの商品を20分も30分もだらだらと紹介し続ける。しかも生放送の体裁をとり(実際は撮り貯めに決まってる)、画面右側に常に着々と増える数字が表示されている。

「只今、ご注文数が10000件を超えました! 完売間近ですので、どうかお早めにご注文ください」

なんて、司会があおる。

はあ、10000件。この国でこの時間に起きていて、この革のハンドバッグを買い求めそうな人間(年配の女性)がそもそも10000人もいるわけない。

「只今、レッドが完売しました!」

司会の女性が(リアルタイムを装って)興奮した様子で叫ぶ。なんなんだ。この国の民度に呆れ果てる。

 

ふと僕は、この番組を観ているのが僕一人じゃないかという妄想をしてみる。

生放送を演じる司会をはじめ、日本全国に散り注文をする無数のサクラがいて、僕にバッグを買わせるためだけに茶番を演じているとしたら、面白い。だとしたら意地でも最後まで観てやる。

 

さすがに30分以上も同じバッグを見続けていると少しは愛着が湧く。買わないけど。道ですれ違う人が持っていたら、会釈してしまうかも。天然革の美しさや皮革職人の住むイタリアの地方の名前、豊富な収納ポケット、底部が丈夫だということ等、売り文句をすでに覚えてしまっている。

 

バッグを売り始めてからついに一時間が経った。この手の番組がいくらダラダラ商品を紹介し続けて精神を麻痺させて商品を購入させる作戦をとっているにせよ、異様に長い。しかし僕はテレビを消すことは出来ない。この番組の終わり方が気になる。

 

ついにバッグが全色完売し、司会の女性の安堵した顔が映った。実に販売開始から一時間半経っていた。

 

僕が番組を観切ったという満足感とともに窓を見やると、東の空がすでに少し白み始めていた。何、もう夜が明け始めているなんて。

時計を見ると4時であった。

なんてことだ。僕はくだらない通販番組のために貴重な睡眠時間を無駄にしてしまった。一日の始まりを台無しにしてしまった。虚脱感と自己嫌悪に襲われ、あー、とため息とも小さな叫びともとれる小さな声をあげた。

 

まだ通販番組は続いていた。次に紹介されているのは「朝」だった。

「朝日降り注ぐ、爽やかな一日の始まりをあなたにお届けします! 当番組のイチオシ商品です!」

僕は迷わず、画面下部に常時表示されているフリーダイヤルへ電話をかけた。

 

数日後に「朝」が届いたものの、僕は頭を抱えていた。

両腕を広げた幅以上に大きく、洗濯機並みに重い、段ボールに包まれたそれは、移動もままならず、宅配便の届け人が置いた場所のまま、部屋の中央にましましている。

開けたらいきなり作動するのか、大きな音はするのか、「朝」の適用範囲はどこまでなのか、ご近所の迷惑にはならないのか……不安が大きすぎて荷をほどくことさえ出来ずにいる。

そもそも朝なんて、僕が等しく一日ひとつ持っているものであって、買う必要なんて無い、

「絶対に要らないもの」だったんだ。

一日に二回朝が来たって、調子が狂うだけだ。ああ……。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

深夜テンションをバカにして「僕はひっからないぞ」と思ってる人が、自分が深夜テンションに巻き込まれていたことに気付いた時の自己嫌悪のあまり変なものを買ってしまうというお話でした

 

私は朝派です。今日も五時半起きです。

大体一時間半ほど、小説を書いたり本を読んだりしてから出勤しています。

これを始めたのは今年の二月くらいなんだが、あきらかに調子が良い。

というのも朝は一番集中力が出るのだよね。

こんなに能率がいい時間を職場に明け渡してなるか、と思って頑張って早起きしてる

 

その分夜も早く寝るから、深夜のグダグダTLに巻き込まれないで済むなどの

メリットがあります笑

デメリットとしては、飲み会とか行くとガタガタに崩れるというのと、

友人とメールの時間帯がずれるってことだな

(私が朝イチにメール返信すると普通に迷惑だからな笑)

眠くてライヴハウスも最後の一バンド観れないぞ!笑

 

 

夜と言えば、私のものすごく好きな作家アゴタ・クリストフの

短編集「どちらでもいい」の中に入っている「夜盗」という話が大好きです。

1000字もいかないくらいのド短編だからここに全文引用したいくらいなんだけど、

著作権が気になるのでやめておくわ。ぜひ本借りて読んでください。

ちなみに私のモウスト・フェイバリット・アゴタ・クリストフは

「悪童日記」なのでそちらも是非ご一緒に。

「悪童日記」は、もう人生で5回以上読んでる。いつかああいうの書いてみたい

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