小説の基礎練15:馬蹄をあらわす(お題:小指の爪)

小説の基礎練です。詳細はリンク参照。

 


「小指の爪、どうしたの、ケガ?」

 

今思うと僕も緊張していた。どこを見ていいか分からず足元ばかり見ていたら、彼女の足お小指の爪が不自然に赤く染まっていることに気付いて、どうでもいいのにそんなことを言った。

 

「ううんペディキュア」

「ペディキュア?」

「マニキュアを足の指に塗るのそう言うんだよ」

「ふうん……」

「校則厳しいからマニキュアつけたら怒られるからみんなペディキュアで我慢してる。つってもソックス履くから見えないんだけどね。でもなんかちょっと楽しいじゃん。でも昨日プールなのに落とし忘れちゃって怒られた。だから落としたんだけど小指の爪ってなんかちんちくりんじゃん?」

 

と彼女は早口で言うと便器の蓋の上に片膝を立てて小指の爪を見せた。

 

「なんか、肉に埋もれてゴミみたくくっついてる。だからうまく塗れないし、落とせないし、ま、これくらいいっかーと思って」

 

彼女は片足を元に戻すと再び作業――キスを終えると僕のズボンのチャックを下ろし始めた――に戻った。僕は自分のベルトが他人に外されるカチャカチャという音を上の空で聞きながら、まだ彼女の言葉が頭の中にひっかかっていた。

 

ということは、この厚底サンダルを履いた脚は随分大人びて見えるけど、

 

「高校生なの? 大学生かと思ってた」

「ううん中学」

「中学?!」

 

僕はチャックから中身を取り出そうとする彼女の肩を持ってひっぺがした。

 

「なんで? だめ?」

 

そう言う彼女の顔をまじまじと見ると、確かにきつい化粧の下にうずもれた素顔は幼なそうである。さっきの一方的な早口も、子供っぽいというか、いやむしろ彼女も緊張していたのか。

 

「中学生だからバイトも出来ないしお金も無いの。いいでしょ、慈善事業だと思ってさ」

 

僕はふにゃふにゃと便器に座りこんだ。

 

校則は守るのに、もっといけないことはするんだな、という台詞が出かかったが、喉の奥に押しとどめた。はるかにいけないのは僕、ということになる。

 

 

映画館から出てきた時に、映画面白かったですね、と声掛けられたのだった。それでお茶をして話がまとまって、そのままその店の男性トイレに二人で入ったのだった。

その後何度目かに会った時も、まだ彼女は足の小指の爪は赤かった。

 

「ていうかむしろ塗り直してる。小指だけだったら先生気付かないし」

 

ベッドの上で手足をしゃかしゃか動かして全身でシーツの感触を楽しんでいる裸の彼女の唯一の意思とか、反抗心をあらわすように、小さな赤が光っていた。

中学生の女の子はヘアピンとか、ケータイのストラップとか、身体の周りの小さなものにこだわりをもつ。その中にその爪も入っていると思うとかわいらしかった。

僕があげた金はそういうものや、友達と遊ぶのとか、CDとか漫画に消えていくらしかった。つつましいものじゃないか。

 

 

 

夏休みが始まり、彼女のようなサンダルにミニスカートの子供の姿があふれだした。

僕がたまたまあの時の映画館で映画を見て、あの時と同じ喫茶店に入って、用を足そうと思った時、扉の下から見覚えのある小指の爪がのぞいていた。もちろんここは男子トイレだ。

 

「……」

 

分かっていたはずだ。自分だけじゃないと。何を思いあがっていたんだか。いや、分かっていたけど気付かないふりをしていたのか。「私はブランドのバッグとか要らないからパパはひとりで十分だし。そういうの欲しがる子もいるけど」そういう言葉を鵜呑みにしていた。

 

僕はそれからその喫茶店や街のいたるところのトイレに入っては。足元をのぞく癖がついてしまった。そのために街をぶらつくこともあるくらいだった。

 

 

早く秋が来ればいいと思った。サンダルの季節が終われば、と。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

こまった時のエロ頼み。

 

 

足の形って人それぞれなのに普段あんまり見ないから、

だいたい他人のを見ると「変なのー」って思う。

自分の形が一番普通できれいなものだと思ってしまっている

でも他人に見られたら「変なのー」と思われるのだろう

 

手の爪もわりにそんなところがある。

この前「爪のきれいさだけは自信がある!!」とか言って

手の画像をtwitterに上げてた人がいたけど

「変な爪―。でかすぎ」と思っただけだった。

 

他人の足の爪なんてもう最強に気持ち悪いですよねー。

 

気持ち悪いと言えばこの主人公の男もきもちわるいなーと思います。

気持ち悪いなーと思いながら書きました。

 

 

 

ペディキュアと言えば、

おなじみ綿矢りさ「インストール」でも名シーンがありますね。

主人公の女子高生に風俗チャットを紹介したマセガキの家に早朝に忍び込む時

ペディキュアした自分の足みて

「ああ私女泥棒みたい」

って思うんだよね。

 

マニキュア、ペディキュアは自分の視界に入るから

自意識に与える影響が大きいらしい。

(確かにどんなに化粧しても自分じゃ見れない)

 

というわけで小説の題材にもなりやすいにちがいない。 

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