即興小説トレーニング6「これはペンですか?いいえそれは夕日」

お題:これはペンですか?違うわ、それは夕日
必須要素:キノコ

制限時間:15分(オンタイム)

 

これはペン?いいえそれは夕日。じゃああれは?卵。卵から何でも生まれる。明日の卵の殻を割るとまるっと夕日が出てくる。カルトか?マクドだ。月見バーガーを割ると角度がつくと過去が現れる。過去見バーガー。過去にかこつけたカートコバーン、かっこづいたか?いいえ誠のアウトデラックス。降板?いいえ交番。交換?いいえ卒業。卒業しても同じ巣から生まれたの、ミラクルロマンス。コバーンす。子burnす。股間す?同じ股間から生まれたの?いいえキノコが同じです。きのこたけのこあいつどこの子?光彩がちがう。交際期間のずれ。勾配がついて、月見バーガーは日和見バーガーに、というか未来見バーガーに。月に未来人が住んでいて、でも光がここに来る頃には大分過去になってしまう。過去を解放、交換しよう?あの日にしてしまったこと。

即興小説トレーニング5「小説が最強のソリューションである」

お題:騙された小説トレーニング 必須要素:弓道 制限時間:15分(6分オーバー)

 

「小説トレーニングは!筋トレと!同じ!毎日!一日たった15分つ!ちょっとキツいなというくらいの負荷を!書ければ!明日にはそれが大丈夫になる!そしてまた明日!もっと長く書けるようになる!」
今日は15分で2000字の小説を書かされてた。この「SHOトレジム」に入った時は、15分で200字、というか、15分で話をひとつ書くことすら全くできなかったのに、今や考える前に筆が動く。15分2000字の世界では、考えている暇はない。
トレーナー曰く、「筋トレと同じ!」考えず、いいからやれ、とのことだ。
しかし僕の頭の中ではだんだんと疑惑が育っていく。15分2000字の世界では、もうオチも伏線も、というか、ストーリーすらない。これはただぎりぎり日本語と言える何かを垂れ流しているだけ。これは小説と言えるのか?ギリギリいいとこ、イタコが受けた神のお告げをそのまま書き付けたもの、ん?いや、もしかしかしたらそれは小説より良いものなのでは?僕は今小説より良いものを書いているのか?

一ヶ月の強化トレーニングが終わった後、俺は15分で10000字書けるようになり、セミトレーナーの称号を得た。ジムで、トレーナーの同伴が必要なマシンを一人で使えるようになったり、ジムの使用時間が無期限になったりと、なにかと優待がある。しかも、新規会員勧誘もできるになったから、これからは勧誘活動をして、インセンティブをもらうこともできる。俺は、SHOトレの良さをまだ知らない人に、良さを説く資格も得たのだ。

俺はトレーナーの進めるまま、一ヶ月で書いた小説を本にした。製本代はちょっとした旅行に行けるほどの額だったが、できあがった本は村上春樹の最新刊より分暑く、俺の心はとても満足した。
毎日その本をカバンに入れて、大事に持ち歩いた。重いしかさばるが、そんなことよりメンタルの向上効果の方が大事。もし俺が望めば、印刷代さえ払えば全国の本屋に置いてもらうこともできるそうだ。

ある日、チャリで帰宅するさい、弓道の練習場の横を通りがかったら、そこから誤って討たれた矢が俺の背中に
しかし、俺は無傷だった。背中にせおったバックパックに入った俺の本が、矢から俺を守ってくれたのだ。
やはり、小説トレーニングはすごい。これからも生涯をかけて信頼していくつもりだ。

即興小説トレーニング4「グルグルクローム」

お題:潔白な螺旋  必須要素:骨董 制限時間:15分(オンタイム)

 

進歩する過程は、高い山につけられた登山道のように、螺旋するものである。
旋回しながら高みにのぼっていくが、その中で幾度も「これはこの前みた景色と同じだ」と思って失望する瞬間がある。
しかし、見えている景色の高さは確実に高くなっており、頂上は近づいている。

 

「これは骨とう品のDNAだな」
研究者は言った。
「つまり、ガラクタだと思って打ち捨てられていたが、後世には評価が高くなるもの……」

当時その王朝では、目が二重で、全体に色素が薄く、足の第2指が一番長い、いわゆる大陸型の人間は忌み嫌われていた。死ぬまで差別を受け、奴隷やゴミ拾いなど職にしかつけず、死後も火葬をゆるされず、凍った土地に放り出された。何も悪いことをしていないのに、そういう扱いを受けていた。
しかしそのおかげで遺伝子が美しい形で残り、研究者が取り出せるに至った。

 

現在ほぼ絶滅しつつある、その遺伝子を持つ人間が、現在流行している感染症に強い耐性を持つのでは、という仮説があり、遺体はその研究に役立った。

 

当時はその大陸型の人間は、むしろ病気に弱く、結婚の時にその遺伝子が忌み嫌われたことから、差別につながっていたらしい。当時は「劣性」「退化した人間」「さるに近い」と言われていたらしい。

しかし実は、人類全体としては、その遺伝子を保存しておくことが、進歩の山をのぼることにつながったのだ。

即興小説トレーニング3「ないがある」

お題:僕と洞窟 必須要素:信仰 制限時間:15分(オンタイム)

 

僕は洞窟の奥へ奥へと進んでいった。かならず洞窟の奥は光あふれる次の世界へつながっていると信じていた。それは、僕のグルの教えで、あまりに暗すぎるから見えないけど、僕の同志たちも、同じことを考えて同じ方向へ進んでいるはずだった。
ついに、あまりに光あふれる世界にたどりついたが、それは僕の目がなくなるのと同時だった。新しい爽やかな風を感じたが、それは僕の身体がなくなるのと同時だった。
僕は、むしろ外へ外へと進むべきだったのか。それとも、これが正しかったのか。そんなことを考える脳ももうなくなっていた。
 

 

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即興小説トレーニング2「ブートレッグ」

お題:アブノーマルな仕事 必須要素:靴下 制限時間:15分(オンタイム)

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麻薬売りの俺は靴下の中にいつもブツを入れている。ブーツを履けばすぐには見えない。
どんな時だってうかつには靴をぬがない。
でも俺は彼女と寝る時に焦ってうっかり、そのブツを靴下ごとベッド脇にすっころがしたまま、眠りについてしまう。
起きたら彼女に問い詰められる。
「もう足を洗ったといったでしょう」
そういうけじめのつかない人とは、さようなら、と言われてしまう。
なんてこった。パンツはともかく、靴下なんて脱ぐ必要ないのに。
本当は、今日俺は求婚するつもりで、指輪だって用意していたのに。
彼女のアパートメントを締め出されるように出て、しかたがないので、玄関の前にでていた靴の中に指輪をしのばせる。

いつしか、風のうわさで聞く。
彼女の指がなくなったと。彼女だってアブノーマルな仕事だった。彼女は彼女で、何らかのけじめをつける用件があったのだろう。
なんてこった。指輪はあるのに。指がない。足はあるのに。クスリを詰める靴下も、クスリを詰めた靴下ごとつっこむブーツだってまだあるのに。

もう俺は彼女に連絡することができない。彼女はもうあのアパートメントに住んでいない。
まだ足はある彼女は、指輪を見つけただろうか。
もともと俺たちはすれ違いで、指がなくなる彼女に指輪を送る俺なんて、とんだトンチンカン野郎だったのだろう。
俺は足を洗ったが、おそすぎる。今更。

即興小説トレーニング「監禁期間」

即興小説トレーニング「監禁期間」

お題:臆病な監禁 必須要素:イヤホン 制限時間:15分(5分オーバー)

 

スパイだった俺は今敵の手にかかり監禁されている。
やつらが俺をどうしようとしてるか分からないが、すごい臆病者なのか、一度も姿を見せたことはない。
窓一つないし、周りに人気もなく、この四角くて白い部屋の外部がどうなっているかは分からない。
食事はトレイ一枚がやっと通る、郵便受けのような細いスリットからさしこまれる。そのスリットの向こうにも人気は無く、どうやら機械が食事を届けているらしい。
俺の耳にはイヤホンが差し込まれており、これはどうあがいても絶対に抜けることがない。そのイヤホンのAIぽい声が、たびたび話しかけてくる。
逃げようとしても無駄ですよ、とか、あなたはここで生きた心地のしないまま生かされ、気が狂うまで出られないのです、だとか、士気をくじく言葉を投げかけてくる。
はじめは、スパイになるまでに相当な訓練を受けた俺だから、そんな言葉には屈せず、無視していた。しかし他に全く他の人間がいない空間で、何日もそいつの声だけを聞く生活に耐えられず、時にはつい反応して怒鳴ったりしてしまうのだった。
次第に、AIが軟化してきた。疲れていることでしょう、とか、スパイになったことを後悔していますか、とか、家族はどこにいるんですか、とか、俺の俺の内面に踏み込もうとして来る。そして心なしか、声が俺に似てきたのだ。AIが俺の声紋を学習しているのだろう。精神的にかなりまいっていた俺は、軟化してきた俺によく似た声のAIと会話を始めるようになった。
そして、身の上話から何から話してしまった俺たちは、会話のネタもなくなり、しまいにはどんどん単純化していった。

「つらい」「つらいよな」「でたい」「でたいだろう」「いつまでここにいるんだろう」「いつまでここにいるんだろうな」……こんなものばかりで、俺に似た声が俺のオウム返しをするだけ、それでも精神をぎりぎり保つためには必要な営みだった。
やつらの意図がなんだかわからないが、気が狂わないでいるためには、この声にすがるしかない。
そんな中、ある日起きたらイヤホンがこわれていた。数週間?数か月?ぶりに耳からイヤホンがはずれ、しかし俺はもうあの声が聴けないことに耐えられず、叫び、あばれ、のたうちまわる。
イヤホンのコードを首に回し、意識を断とうとする。これが奴らの狙いだったのか?
 

 

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即興童話でお勉強 2 コンビニおにぎり/恋/タイツ


昔、嘘つきバービーというバンドのVo& Bの岩下さんという人がブログでやっていた「即興童話でお勉強」というコーナーが死ぬほど面白かった。(今はサイト消失しているようだ)
なぜか私は紙に印刷して保存していたので今も読める。(それほど好きだった)
 
わたしもやってみることにする。

1はこちら



【即興童話でお勉強】
問題:
家族から適当に3つのキー単語を言ってもらい、それらの単語を絡めながら即興で童話を作りなさい。
 
答え:
【家族からもらったキー単語】
1.コンビニおにぎり
2.恋
3.タイツ

 
『ヤブれてしまう系の僕らに』
 
「あーもう絶対うまくできないこれー!!」
コンビニのイートインコーナーに座っている女子高生が派手に毒づく。手には、開封を失敗して海苔がビリビリになってしまっているおにぎりがある。すると入口の自動ドアが開いて
「お疲れさまでーす彼女にフられた岩本でーす遅番入りまーす!!」
パーカーを着て眼鏡をかけた若いやせ形の男がなだれこんでくる。膝でスライディングしてきて、つるつるした床を正座状態で滑り女子高生の足元で静止する。
「あ、パンツ見えそうポジション」
「うっせえよ!」
すかさず女子高生から蹴りが入る。
「誰だか知んないけどさあ! 私は今機嫌が悪いんだよ!」
「大変申し訳ございませんでしたー!!」
吹き飛んだメガネを拾ってかけなおすと、パーカー男は女子高生の手元のおにぎりをじっと見つめ、
「うん、おにぎり、うん! 僕、『陰毛がおにぎりの海苔みたい』って言ってフラれたんですよー! せっかく、きれいに整えたのに! 彼女、喜ぶと思ってやったのに! オサレなのに! ツーフィンガーなのに! ああー」
男は、メッカに祈るムスリム教徒のように床に頭をこすりつけながら泣き始める。女子高生はそれを無視しておにぎりを食べようとする。すると、
「動くな! 金を出せ!」
 入口からドスのきいた声がして、女子高生とパーカー男は揃って振り返る。黒い布で頭部を覆われ、全身も黒ずくめの、体格の良い男が、入口に立っている。手に握った包丁がぎらりと光る。女子高生もパーカー男も凍りついたように動かずにいるが、奇妙なことに男は入口に立ったまま中に入ってこようとせず、しばらくしてから、まるで薄氷を踏むようにおそるおそる歩き始める。と思ったら、マットの端に躓いて転んだ。包丁が床に落ちて硬質な音を立てて跳ねてこちらに滑ってきたので、パーカー男がすかさずつかみとる。
「だあー! だめだー! 間違ってストッキングじゃなくてタイツ被ってきちゃったから、厚くて全然前が見えねー! デニール!」
強盗男は、床を転がりながら悔しそうにわめいている。
「俺は何やってもダメなんだー! 全然うまくいかねー! ちくしょー!」
その隙に、女子高生は商品棚からガムテープをつかみとり、強盗男を素早くぐるぐる巻きにしてしまう。
「へへ、むしゃくしゃしてるんだ、おにぎりのリベンジだね!」
女子高生は若い男に「貸しな!」と言って包丁をもぎとり、いもむし状態の強盗男の首元にあてると、タイツに縦に切れ目を入れる。そこに指をいれてかっ開くとタイツがきれいに避裂けて、強盗男の頭部が出てきた。
「ほらー、今度はうまく開けられた。あれ、イケメンじゃん! ねえ、そんなやぶれかぶれなら、私と付き合ってよ!」
「いや、俺ゲイなので」
「なっ……」
 後ろで見ていたパーカー男がぷっ、と噴き出したのを聞いて女子高生は
「黙れこの、陰毛海苔野郎!」
と頭をはたく。
「え……、そちらの方、陰毛がそんなおしゃれな形に整えられているんですか……? 美意識高いじゃないですか! 素敵……!」
芋虫状態の強盗男が急にしなをつくってくねくねしだす。
「こんな自分ですけど、よかったら、付き合ってくれませんか?」
パーカー男は床につけた尻を後ずさりさせながら
「ヒッ、す、すみません……僕女の子好きなんで……」
おびえた声で返す。
「そっかー……そうですよねえ、はあ〜……」
「そ、それより」
パーカー男が、包丁を手に立つ女子高生を恍惚とした目で見上げる。
「あなたの、その躊躇のない蹴り、鮮やかな縛り、そして見事な罵倒っぷり……、もしかして、じょ、女王様をされてるんですか?」
「はあ? 何言ってんの?」
パーカー男が再びムスリム教徒のように頭を床にこすりつけて叫ぶ。
「ぼくの、女王様になってください!」
「あー? 意味わかんない。私女王様じゃないし、そっちのケ無いし、ごめん」
 各々は静かに解散した。破れたタイツ、破れたおにぎりの海苔、破れたズボンの膝を携えて。それと、一瞬で芽生え、破れた恋心を。
 
 
 
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「コンビニおにぎり」も「恋」も「タイツ」も全部破れるな、と気づいた。
あとは「タイツ→ストッキング→強盗」という連想が働いた。
キーワードはある程度「濃い」ほうがやりやすいかも。
キーワードくれる人募集中です。コメントに書いてね。

即興童話でお勉強 1 フランスパン/定規/警報


昔、嘘つきバービーというバンドのVo& Bの岩下さんという人がブログでやっていた「即興童話でお勉強」というコーナーが死ぬほど面白かった。(今はサイト消失しているようだ

なぜか私は紙に印刷して保存していたので今も読める。(それほど好きだった)本当は写メしてupしたいほどに面白いのだが、サイトが消えている以上それも行儀が悪い気がするので我慢しておく。 

とりあえず、わたしもやってみたくなったので、やってみることにする。
 
【即興童話でお勉強】
問題:

家族から適当に3つのキー単語を言ってもらい、それらの単語を絡めながら即興で童話を作りなさい。

 
答え:

【家族からもらったキー単語】
1.フランスパン
2.定規
3.警報 
 
『ハードじゃパン』
 
正門が近づくと、フランスパンを小脇に抱えた右腕にぎゅっと力がこもる。
1m定規で門柱をぴしぴしと叩きながら生徒を物色している生活指導の教師が目に入る。
「おはよう、加藤」
声をかけられて、思わずびくりと背を震わせてしまう。さっと私の脇に入り込んだ教師は定規を私のフランスパンにあてる。
83cm! 上限を3cmも超えているじゃないか!」
「す、すみません……今日起きるのが遅くて……」
「まさか家から買い置きを持ってきたのか? どうりでカッチカチなわけだ!毎朝焼きたてを買うのがパリジェンヌの基本だろう!」
 教師が私のフランスパンを、まるで硬さを確かめるように定規でぴしぴし叩く。
「お前、来春には留学する予定なんだろ? パンの乱れは心の乱れ! こんなパンを持ち歩いて笑われないのは日本だけだからな?!」
「はい、すみません、明日から気を付けます……」
背中に教師の睨みつける視線を感じながら、逃げるように去って教室に入る。
ここは、日本でも有数のパリジェンヌ養成高校。フランスに憧れ、フランス文化を愛し、将来はフランスに留学したい……というのは建前で、なんとなくフランスっておしゃれな感じがするしフランス人イケメンだし向こうでは日本人超モテるらしいしワンチャンないかな、と甘い夢を見る日本人乙女のための、留学準備校だ。両親を説得してこの学校にもぐりこんだものの、正直、眉唾モノだと気づいたのが遅すぎた。なんでフランスパン数cmのことでイチャモンつけられないといけないんだ。というかそもそも、本場のフランス人は本当に小脇にフランスパンを抱えているのか? 
むしゃくしゃするし、3cm食べてしまおう、ほかの教師にもねちねち言われるのは癪だし……かぶりつこうと大口を開けたところで、警報が鳴った。
「校舎に変質者が侵入しました! 北門から避難してください!」
そのアナウンスを聞き終える間もなく、教室にコートを羽織った中年の男が飛び込んできた。コートの中は全裸で、だらしなく開いた口の端からよだれを垂らしながら、にやにやした笑みを浮かべて教室の中へと進み入ってくる。泣き叫ぶクラスメイト達に委員長が言った。
「みんな! こういう時こそこれを使うのよ!」
委員長はフランスパンを構え、男に挑みかかった。しかし、まだ焼きたての芳醇な香りが漂う、標準長75cmぴったりの美しいそれは、男の手にかかるとふわりと折れてしまう。
「う~ん、じゅて〜む。とれびあ〜ん」
男はもぎとった委員長のフランスパンをむしゃむしゃと食べてしまう。
ほかのクラスメイトも次々とフランスパンを男に切り込んでいくが皆太刀打ちできず、男に食われるままだ。
「みんなどいて!」
 私は、昨日の買い置きの、かっちかちになった、不格好に長いフランスパンを日本刀のごとく構えて変態男に挑みかかった。
「これでもくらえ!」
 まだ食い足りないというようにあんぐりと開けている男の口めがけて振り下ろすと、男の歯が砕ける音がした。



・・・・・・・・・・・

昔見たファッション雑誌の「海外モデルのイケてるハロウィーンパーティレポ」みたいな記事で、
皆が気合の入った仮装をする中、白Tシャツ、ブルージーンズ、小脇に抱えたフランスパンのみの井出達で
「パリジャン」と称した男性がいて、非常に記憶に残っているのだった。
確か装苑とかVOGUEみたいなガチにハイクラスにおしゃれな雑誌だったので、驚きもひとしおだった。

 

小説の基礎練17:深夜テンション(お題:深夜番組)

 

小説の基礎練です。ルールはリンク参照。

 




たまに深夜番組なんかを観てしまうとうんざりする。

 

高級羽毛布団、bluerayプレイヤー、ワニ革の黄色い財布、カニ、つけるだけで痩せるマシーン、パン焼き機、青汁……冷静に考えれば絶対要らないもの、でもあればちょっと生活が良くなるような気がするものが、深夜に緩んだ人間の心の隙間めがけて押し寄せてくる。

これは要らない、これも要らない、これはちょっと……うん、やっぱり要らない。こんな大きなマシンどこに置くんだ。それにこういうのは大体作動音がうるさくて、「テレビを観ながら気軽にフィットネス」なんて出来ないんだ。意外と振動したりして階下の人に気を使ってしまったり。機械の掃除が面倒だったり。コンセントが短かくて不便だったり。室内物干しになるのが関の山だ。うん、要らない。

 

僕は自分の心の隙間を狙ってきた商品たちを打ち返しながら満足な気持ちになる。

 

こういう通販番組は非常に辟易することにひとつの商品を20分も30分もだらだらと紹介し続ける。しかも生放送の体裁をとり(実際は撮り貯めに決まってる)、画面右側に常に着々と増える数字が表示されている。

「只今、ご注文数が10000件を超えました! 完売間近ですので、どうかお早めにご注文ください」

なんて、司会があおる。

はあ、10000件。この国でこの時間に起きていて、この革のハンドバッグを買い求めそうな人間(年配の女性)がそもそも10000人もいるわけない。

「只今、レッドが完売しました!」

司会の女性が(リアルタイムを装って)興奮した様子で叫ぶ。なんなんだ。この国の民度に呆れ果てる。

 

ふと僕は、この番組を観ているのが僕一人じゃないかという妄想をしてみる。

生放送を演じる司会をはじめ、日本全国に散り注文をする無数のサクラがいて、僕にバッグを買わせるためだけに茶番を演じているとしたら、面白い。だとしたら意地でも最後まで観てやる。

 

さすがに30分以上も同じバッグを見続けていると少しは愛着が湧く。買わないけど。道ですれ違う人が持っていたら、会釈してしまうかも。天然革の美しさや皮革職人の住むイタリアの地方の名前、豊富な収納ポケット、底部が丈夫だということ等、売り文句をすでに覚えてしまっている。

 

バッグを売り始めてからついに一時間が経った。この手の番組がいくらダラダラ商品を紹介し続けて精神を麻痺させて商品を購入させる作戦をとっているにせよ、異様に長い。しかし僕はテレビを消すことは出来ない。この番組の終わり方が気になる。

 

ついにバッグが全色完売し、司会の女性の安堵した顔が映った。実に販売開始から一時間半経っていた。

 

僕が番組を観切ったという満足感とともに窓を見やると、東の空がすでに少し白み始めていた。何、もう夜が明け始めているなんて。

時計を見ると4時であった。

なんてことだ。僕はくだらない通販番組のために貴重な睡眠時間を無駄にしてしまった。一日の始まりを台無しにしてしまった。虚脱感と自己嫌悪に襲われ、あー、とため息とも小さな叫びともとれる小さな声をあげた。

 

まだ通販番組は続いていた。次に紹介されているのは「朝」だった。

「朝日降り注ぐ、爽やかな一日の始まりをあなたにお届けします! 当番組のイチオシ商品です!」

僕は迷わず、画面下部に常時表示されているフリーダイヤルへ電話をかけた。

 

数日後に「朝」が届いたものの、僕は頭を抱えていた。

両腕を広げた幅以上に大きく、洗濯機並みに重い、段ボールに包まれたそれは、移動もままならず、宅配便の届け人が置いた場所のまま、部屋の中央にましましている。

開けたらいきなり作動するのか、大きな音はするのか、「朝」の適用範囲はどこまでなのか、ご近所の迷惑にはならないのか……不安が大きすぎて荷をほどくことさえ出来ずにいる。

そもそも朝なんて、僕が等しく一日ひとつ持っているものであって、買う必要なんて無い、

「絶対に要らないもの」だったんだ。

一日に二回朝が来たって、調子が狂うだけだ。ああ……。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

深夜テンションをバカにして「僕はひっからないぞ」と思ってる人が、自分が深夜テンションに巻き込まれていたことに気付いた時の自己嫌悪のあまり変なものを買ってしまうというお話でした

 

私は朝派です。今日も五時半起きです。

大体一時間半ほど、小説を書いたり本を読んだりしてから出勤しています。

これを始めたのは今年の二月くらいなんだが、あきらかに調子が良い。

というのも朝は一番集中力が出るのだよね。

こんなに能率がいい時間を職場に明け渡してなるか、と思って頑張って早起きしてる

 

その分夜も早く寝るから、深夜のグダグダTLに巻き込まれないで済むなどの

メリットがあります笑

デメリットとしては、飲み会とか行くとガタガタに崩れるというのと、

友人とメールの時間帯がずれるってことだな

(私が朝イチにメール返信すると普通に迷惑だからな笑)

眠くてライヴハウスも最後の一バンド観れないぞ!笑

 

 

夜と言えば、私のものすごく好きな作家アゴタ・クリストフの

短編集「どちらでもいい」の中に入っている「夜盗」という話が大好きです。

1000字もいかないくらいのド短編だからここに全文引用したいくらいなんだけど、

著作権が気になるのでやめておくわ。ぜひ本借りて読んでください。

ちなみに私のモウスト・フェイバリット・アゴタ・クリストフは

「悪童日記」なのでそちらも是非ご一緒に。

「悪童日記」は、もう人生で5回以上読んでる。いつかああいうの書いてみたい

小説の基礎練16:子供の階段(お題:階段)

 

小説の基礎練です。ルールはリンク参照。

 

 

わたしももう六年生だ、そしてもうすぐ卒業なんだな、と、毎朝この階段を上るたびに思う。

 

この小学校は上の学年ほど上の階に教室が置かれる。

一年生の時は一階の教室のべランダから直で校庭に出て、昼休みの時間いっぱい外で遊んだものだ、と、昇降口付近を駆け回るちびっこ達を見ながら思う。

高学年の今は一階まで下りて外に出るのも億劫だし、女子同士でおしゃべりしながら休み時間を過ごすことが多い。

 

小学校って不思議なところだなあと思う。一年生と六年生、心も体も育ち具合が全然違う人間がひとつの建物に入っている。同じ遊具で遊べと言うのもおかしいくらい、違う生き物なのに。

 

上級生がいる上の階はちょっと怖いし、でもちょっとあこがれていた。今は自分がそこにいるのだと思う。

 

一階と二階の間の踊り場には鏡がある。いつもの癖で、別に見るともなく自分を見てしまう。

でも今日はおかしなことに気付いた。

「あれ」

私は今日は赤いチェックのスカートを履いていたはずなのに、鏡に映る私は体育着、しかも上履きの色は赤。今よりずっと背が小さくて、髪も短い。これは……小三の時の私じゃないだろうか。

鏡の中から「あずみちゃん」と私の名を呼ばれたので、思わず手を伸ばす。そのまま鏡の向こうの誰かに手をひっぱられて、鏡の中に入ってしまった。そこにいるのはえりかちゃんだった。場所は校庭。聞こえるみんなの歓声。運動会だ。

 

なんでこんなところにいきなりワープしてしまったんだろう。私は何かを握り締めているようだ、と気付いて手を開くと、100m走で一等賞になった子に渡される小さな引換券が出て来た。それを見た瞬間、私の頭は記憶のぶりかえしでぐわんぐわん揺れた。

 

えりかちゃんは100m走で一等賞になったのに、この引換券をなくしてしまった。というか、えりかちゃんのポケットから落ちたのを二等賞の私がこっそり拾って、ねこばばしてしまったのだ。その引換券を町内会のテントに持っていくとお菓子が貰えるのだけど、食い意地の張っていないえりかちゃんは無くしたことを全然気にしていない様子だったので、わたしはありがたく頂戴してしまったのだ。でも翌日、えりかちゃんはお母さんからこっぴどく怒られたのだと聞いた。無くしたならちゃんと町内会の人に説明してもう一回貰いなさい、あんたは押しが弱すぎる。何より一年生の弟が、そのお菓子に含まれているカード入りポテチを貰えるのを楽しみにしていて、とてもがっかりしていたらしい。

 

翌日そんなことを聞いてからますます打ち明けられなくて、今まで来てしまった。

でも、今なら言える。

「えりかちゃん、これ、落としたよ」

「あ、ありがとう」

えりかちゃんの手にそれを渡したと思ったら、その腕を引っ張られて再び鏡の外に戻されていた。

 

鏡にはちゃんと、赤チェックのスカートを履いた今日の私が映っている。

「なんだったんだろう」

私は首をかしげながら再び階段をのぼりはじめた。

二階と三階の間の踊り場にも鏡はある。なんとなくまた覗きこんでしまったら、今度はスクール水着を着た私が現れた。胸には大きく「4-2 芹沢」のゼッケンが縫い付けられている。

またしても鏡の中から私の名前を呼ぶ声がする。私はずんずんと鏡の中へ進み入った。

 

そこは学校のプールだった。目の前には見学者が座る用の小さなテントがある。そこにいたのはかおりちゃんだった。

私はまたもや記憶の中にあった苦しい気持ちに襲われた。

わたしはこの日、週に三回あるプールの時間を全部休んだかおりちゃんに、「ずる休みなの? 本当にそんなにお腹痛いなら学校休めばいーのに、おかしくない?」と心無いことを言ってしまったんだ。わたしがブールが大嫌いだったから、休みっぱなしのかおりちゃんを僻んで、ずるしてる、と思ってしまった。でも今なら分かる。かおりちゃんは生理だったんだ。それに気付いたのは、この時から一年も経った最近のことで、私にも生理が来たからだ。あのときは本当に申し訳無かった。

 

私は今度は何も言わないで、かおりちゃんの傍を通り過ぎることができた。むしろ「ごめん」って言ってしまいそうなくらい、申し訳無い気持ちでいっぱいだった。

 

胸のつかえが下りてほっとした間もなく、また誰かに引っ張り出されるように鏡の外に戻って来た。やはり、鏡は何事も無かったように赤チェックのスカートの今の私を映している。

なんなんだろう、本当に。早くしないと始業のチャイムがなる。私は自分の教室がある四階を目指した。

 

三階と四階の間にも、鏡はある。やっぱり見るわけにはいかなかった。そして今度はそこには、白いシャツにリボンにブレザー、よそいきの格好をした私が映っていた。あれは、五年生から入った器楽クラブの発表会の格好だ。

 

鏡に入ると長谷川先生が指揮台に立っているのが見え、私はピアノの前に座っていた。リハーサル中みたいだ。

長谷川先生はいつも私にピアノを弾かせた。ピアノは花形だし、私は嬉しかった。けど、私よりピアノの上手い子がいたのだ。まどかちゃんだ。

まどかちゃんは何人もいる鍵盤ハーモニカのリーダーをやっていた。

なぜか長谷川先生は、まどかちゃんばかりを叱った。私がリズムを崩しても鍵盤ハーモニカのせいにしてまどかちゃんを注意した。私は一度も何も言われず、もどかしい気持ちを抱えながらも言いだせなかった。何度も同じ個所を間違えているのは私なのに。ああ、もう少しするとまどかちゃんは泣いてしまうんだ。その前に私は、今度は、言わなくては。

 

「ねえまどかちゃん、私、ここの譜面が何度見てもよく分からないの。まどかちゃんお手本弾いてみてくれないかなあ」

 

まどかちゃんの目からこぼれそうになっていた涙をひっこめることができた。鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている長谷川先生を見て、すかっとした。

 

また元の世界に引き戻された。私は四階まで駆け上り、チャイムぎりぎりに教室に滑り込んだ。

そして息を弾ませながら、自分の席に座ると、えりかちゃんもかおりちゃんもまどかちゃんも、今、同じクラスにいることに気がついた。

 

あの階段の不思議な出来事で、私は分かった。過ぎてしまった昔のことを、今更無しには出来ない。自分のせいで、えりかちゃんとかおりちゃんとまどかちゃんとは距離を置いてしまい、同じクラスなのになんとなく話しにくくなってしまった。

でも、今ならまだ同じ教室にいる。これが中学になって離れ離れになったら、多分一生謝れないところだった。向こうが忘れてしまっていてもいい、「今更何」とむかつかれてしまってもいい、休み時間になったら三人に話してみよう。

 

私は気付いていた。多分あの階段は、私が大人になるまで続いている。ううん、一生続いている。だから一生ちくちくと思いだしては、嫌な気持ちになるんだろう。だったら、まだ、今謝った方がいい。大人になったら、一生会えない人なんてどんどん増えていくんだろう。六年間同じところにずっといるのは、ラッキーなことだ。

 

ガラッと戸が開いて、先生が入って来た。担任は器楽クラブの顧問と同じ、音楽の長谷川先生だ。

いつも通りの朝の会が始まり、先生が今日の掃除当番を読み上げた。

「今日は五班ね。四谷君、飯田君、橋本さん、春日さん、よろしくね」

私はまた、胃が痛くなるような気持ちに襲われた。

「先生、私も五班ですけど」

私は勇気を出してそう言った。長谷川先生はこともなげにこう答えた。

「ああ、芹沢さんは昨日ゴミ捨てを手伝ってくれたでしょ? だからいいの」

先生は私にだけ見えるようにウインクをした。嘘だ。ゴミ捨てなんか手伝ってない。

「そういうひいきやめてください」

私は立ち上がって、勇気を出して大きな声で言った。

先生は鏡の中と同じ、虚を突かれたような顔をしていた。

 

 

 

 

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久々にやりました、「基礎練」。

制限時間2時間、テーマ縛りで小説を書くというものです。

久しぶり過ぎて30分くらい過ぎた……あと二日に分けてやってしまった……

まあいいんだよ、いくらルール破っても、続けないよりは……!!

 

一番いいのは人とやることで、

一同に会してテストみたいに「はい、始め!!」ってやることなんだけどね。

まあやりたくなったら今度誰か一緒にやりましょう。

禿げるほど疲れるぜ……

 

 

さて、「階段」と言えば「大人の階段」だよね!(!)

でもなんか私この言葉嫌いでさ

というのも子供から大人に一直線で成長するわけじゃないし、

子供の方が優れた部分もいっぱい持ってるはずだと思うからなんだよね

つまり人間の成長に段階発展説をとるのに反対の立場なんだよね

 

というわけでひねくれて「子供の階段」というタイトルにしてみました

これは「大人になれば、「後悔するような苦い出来事」を抹殺出来るわけではなく、

むしろ全然がんがん生産し続けてしまうんだけど、子供の時の方がまだ謝りやすいよね」

みたいな意味を込めてみた感じだ

書いたとおり、一生階段は続くし、でもそれは進歩しているんではなく、黒歴史を積み重ねているだけなんだよ……!!

 

 

さてこの「基礎練」は、2時間しか無いので、ラストまで決める間もなく序盤を書き始めないと、間に合いません

本当はトラウマイベントに男子女子両方出したかった、とか、長谷川先生のひいきをもっと巧妙なものにしたかった、……とか、あるんだけど、まあ時間が無いので思いついたものでやるしかなかったのさ……

 

書くにあたって自分の小学校での記憶を思い出してたら「あああああ」ってなりました。

習字の時間に前の席の天野君の椅子にかかってた白いパーカーに、墨つけちゃって、黙ってて、ごめんね……あと天野君は私が似顔絵を描いたら泣いてしまった……ごめんね……