自分の聖書は自分で書け

 

 

誰も住んではいけないといわれている二つの部屋があった。

左の部屋は整然として部屋の四隅が見えるほどにものが無く、塵一つ無いほどに日々の掃除が行き届いており、まるで僧侶の住まいのようであった。

右の部屋はいつも湿っていて、閉じられた窓から差し込む日の光を養分に、カビと胞子と蠅が発生していた。そこに、神様も住み着いた。どこから入ってきたかはわからなかった。気が付いたら右の部屋に、いた。何かを歌っていた。姿はよく見えなかった。部屋を埋め尽くす蠅がある空間を避けているため、人々は、そこに何かがいる、と分かった。

神様の歌声はえもいわれぬものだった。えもいわれぬ、としか、言葉では表現できなかった。人々は神様の歌をもっと聞きたくなった。あんな狭くて汚い部屋では神様に失礼ではないか? 左の部屋に、村一番の彫師が作った祭壇をしつらえ、果物、魚、羊の頭をささげた。右と左の部屋を仕切る壁を取り払い、神様がいつでもこちらに来られるようにした。しかし、そうした途端、声は、ぱったりと、聞こえなくなってしまった。

蠅や胞子やカビがいつ入り込んできたかわからないように、神様も、いつ出て行ったかもわからなかった。もうあの声は聞けないのだろうか? 神様が歌っているのはどんな歌だった? 人々の声の記憶は薄れ、ただ、声を聴いたという記憶だけが残った。

 

自分の聖書は自分で書け。自分のアンセムは自分で歌え。記憶の中の神の声、何世代も前の先祖が聞いた声、生まれる前の右の部屋からあふれていたはずの声を、自分で導き出せ。

 

知ってる? すべての音は、何かの通り過ぎる音なんだよ。

 

物体が物体をこする音、息が声帯をすり抜ける音、指が弦をかすめる音、あなたの肉が私の肉を通り過ぎる、摩擦、振動、バイブレーション。

 

知ってる? 水星には何も食べない生き物が住んでるんだよ。ヒトデみたいに星の表面に貼りついて、星が銀河の軌道を動く振動を食べて、生きている。大気の無い水星に音は無い。ただ、唯一、星が出す振動が、この星で鳴る音楽なんだ。

 

君は、右の部屋に閉じ込められた人質だ。私は、左の部屋に住む管理人だ。私のおかげで、君は、時間が分かる。食事もできる、お金も減らない、生活の便利を管理してもらえる。私がいないと君は死んでいた。君は振動を食うだけじゃ生きていけない生き物だから。私は君を生かしている。でも、君から預かったもので、私の両手はふさがり、私は、私の人生を生きることができない。

 

ライナーノーツなんてクソだろ?! おいしいものをおいしいと思うために裏面ひっくり返して原材料表示を見る必要があるか?! 貴様程度の人間は水でも飲んでろ。原材料名、水。水だけ飲んでも人間は一週間死なない。一週間寝て起きて寝て起きて寝て起きて、サイン波みたいな単調な毎日に飽きてるなら最高の振動(バイブレーション)を与えよう。速度が足りないんだろ?

上って降りて上って降りて上って降りて貯金額、支出と収入、株価の変動を眺めるよりもずっとエキサイティングな、1mm1秒の速度で僕の血流を追って、

 

踊れ!

 

速度はいつもまだまだ足りない、言葉じゃなくて意味でもない。この世は速度と物体(速度と物体に「バイブレーション」ルビ)しかない。

 

 

ねえ、君から預かったもの、君の大事なもの、私の両手をふさいでいるものを、放り投げてしまってもいい?

とても柔らかくて、あたたかくて、たぷたぷと波打つ、大人しいうさぎみたいな重さの、

 

君の脳みその半分、

 

 

 

ねえ、

 

 

 

二度と言葉が話せなくてもいい? 

 

 

 

 

 

いいよね。

『ランチボックス・ペインティング2』(会田誠展オマージュ小説)

1もあるよ(続き物ではない)

 

会田誠展に宇宙人が訪れた。

宇宙人は、使い捨て弁当箱に粘土を盛って色とりどりに着色し、抽象絵画のアナロジーとして白い壁におごそかに展示した会田氏の作品を、非常に時間をかけてまじまじと鑑賞し、嘆息した。

「素晴らしい。しかしこんなに素晴らしい作品があるというのになぜここはこんなに空いているのだ?」

宇宙人のほかに客はいなかった。翻訳機の癖なのか、少しぶっきらぼうな口調の宇宙人の日本語に戸惑いながら、会田氏は答えた。

「さあ……どうしてでしょうね」

「隣は何を売っている? 随分と混んでいたが」

「弁当屋です」

ちょうど昼時だった。隣の店は、安価で美味な弁当を出すことで定評があり、飯田橋のサラリーマンたちが連日行列を作る弁当屋だった。

「弁当とは何だ?」

宇宙人が聞いた。

「1食分の食べ物を、栄養バランス良く、美しく詰めて、コンパクトに持ち運び出来るようにしたものです」

宇宙人は服のポケットと思われるところから小さな瓶を取り出した。

「わざわざ1食分を? 錠剤ではダメなのか? これならこの一瓶で1年分持ち運べて、栄養バランスも完璧。携帯にも便利だぞ」

会田氏は口をあんぐり開けてしばしその瓶を見つめていたが、宇宙人の早く答えろ的な空気に押されて、しどろもどろに答えた。

「たぶん、人間は錠剤が好きじゃないんです」

「なぜ? 効率が良いではないか」

「人間はおいしかったり楽しかったりしないとダメなんでしょうね……非効率かもしれませんが……」

「そういうものなのか?」

宇宙人は唐突に展示会場から出て行った。5分後、隣の店の弁当を手にして戻って来た。

会田氏は客の切れ目と思い裏のデスクに座り昼食をとろうとしていたところだったので、若干慌てた。宇宙人は勝手に会田氏の隣に座った。

「おい、隣の弁当より、どう見ても貴様の作品の方が美味そうに見えるのはどういうことだ?」

「え、そうですか?! 意外ですね、どうもありがとうございます」

宇宙人は弁当箱を開け、うへえなんて匂いだ、と言った。それは会田氏にとっては食欲をそそる揚げたてのから揚げの匂いだったのだが。

「造形も、美しくないぞ……毎食行列を作ってこんなものを買っているとは……なんて暇な生き物なんだ、人類は……」

会田氏は今にも広げようとしていた自分の弁当を慌てて隠そうとしたが、宇宙人に気付かれてしまった。

「見せろ」

「は。はあ……」

会田氏の弁当は、妻であり「愛憎弁当」という作品群でも知られる現代美術家岡田裕子氏によるものだった。

「人の顔に似た模様が描かれているな……」

「あの……これは……その……」

その日の弁当は、岡田氏の遊び心により展覧会の告知ビジュアルである安倍総理をかたどった、いうなればキャラ弁だった。

「その弁当は美しいな、変な匂いもしないし」

「はあ、ありがとうございます。僕の妻によるものです。匂いがしないのは、作ってからしばらく経ったからだと思います」

「そういうものか。しかしそれも食べてしまうのだろう? 美しいのに。なぜすぐ食べたり腐ってしまう材料で作るのだ?」

「……僕もそう思います……」

一瞬、この弁当を、自分の作品の横に飾ったら面白いかもしれない、と会田氏は思った。

「さて、我々はそろそろ発たないといけない。この弁当は貴様にやろう」

宇宙人はから揚げ弁当を会田氏の総理弁当の横にドスンとおいた。

「そのかわり、貴様のを頂きたい」

「えっこれですか?」

会田氏は総理弁当に伸ばしかけていた箸を慌ててひっこめる。

「違う。あそこに飾ってある作品のうちのひとつだ。腐るものつまり食品は規定によりロケットに持ち込めないのだ。我々は旅行中、貴様の作品を観ながら錠剤を飲むことにする。それが我々なりの貴様への敬意の表明であり、そして我々が地球の文化を学ぶ端緒となるだろう」

相変わらず偉そうな口調だなと思いながら、会田氏は作品のひとつを壁から外し、宇宙人に手渡した。宇宙人はやはり唐突に会場を去った。

 

ロケットに戻った宇宙人は、部下に言った。

「あの星は侵略対象から外せ。無駄なことばかりやる愚民と思っていたが、少しは骨のある奴もいるようだ」

 

その後、長い移動中に退屈をもてあました部下が会田氏の作品を見つけ、勝手に食べてしまい、宇宙人に激怒されるが、「めちゃめちゃうまいっすよ?!!」と豪語する部下に勧められて自分も食べてみたところあまりの美味に震撼し、急遽舵を地球に戻し侵略、会田氏を工場長とした巨大弁当工場を建設したのだが、それはまた別のお話。

 

 

 

 

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会田誠展「はかないことを夢もうではないか、そうして、事物のうつくしい愚かしさについて思いめぐらそうではないか。」

2016/07/06 - 2016/08/20 火曜日から土曜日の11:00-19:00

@ミヅマアートギャラリー

 

この展覧会へのオマージュです。

 

『ランチボックス・ペインティング』(会田誠展オマージュ小説)

 

 

 

会田誠展の初日に行われるオープニングパーティに現れたのはなぜか女性ばかり、しかも若く美しく、しかもそれを自覚しているかのように品よく着飾ったものばかりであった。彼女らは展示された作品を一瞥したとたん、呆気にとられたのだが、皆それを悟られないように黙ってすましていた。

 

日本有数のギャラリーが用意した美しい広大なホワイトキューブの中、それをおちょくるかのように、使い捨て弁当箱の空き箱が40点あまり、壁にちょこちょこと等間隔に貼り付けられていた。各々の空き箱の中には安価なアクリル絵の具で着色した色とりどりの粘土が盛られており、味覚障がい者の食卓と思う人も、宇宙人のうんこと思う人もいたが、誰もそれを口に出さなかった。

 

オープニングパーティ開始時刻になった頃、ひときわ華やかなドレスに身を包んだ美術関係者やメディア関係者と思われる女たちが押し寄せ、ホワイトキューブの密度はさらに高まっていった。もう作品を落ち着いて鑑賞できる余裕はない。というかパーティが始まるこの時間からここに現れるものにそもそも鑑賞の意思はないだろう。皆、関係者同士の人脈交流や仕事の話、会田氏にとりいることを目的に来ているのだ。それが証拠に作品の感想を述べあう者はほとんどおらず、作品鑑賞を終えて満足したものはとっくに帰っていた。そして何より一番の証拠は、最も混んでいたのが女子トイレの化粧室の鏡の前ということだった。

 

ワインが配られる。会場がごった返し、作品鑑賞はおろか移動もままならなく、女の香水と化粧の匂いで息が詰まりそうになった頃、やっと会田氏の挨拶が始まった。

 

「えー、本日は、ミヅマアートギャラリー『はかないことを夢もうではないか、そうして、事物のうつくしい愚かしさについて思いめぐらそうではないか。』展にお越しいただき、誠にありがとうございます。

本日の展示『ランチボックス・ペインティング』シリーズは、いうまでもなく、弁当箱と絵画のアナロジーに着想を得ています。限定された四角の枠に仕切りがあり、美しく色を配置して受け手に供す……その点ではキャンバスを使った抽象絵画と弁当箱は同等の存在といってもよいでしょう。

しかし作品制作過程で、僕の考えは転換しました。食えない絵具をキャンバスに塗りつけるアートなんかより、弁当箱の方がよっぽどアートなのです。栄養バランスと美観を両立させ、受け手の食欲を喚起するためだけに供する絶対美、それが弁当というアートです。美術と無縁な人生はあれど、食べ物の味を味わわない人生はありません。美術に対して食は勝るのです。僕のこの展示は入場無料ですが、隣に無料の弁当屋があったら間違いなく先にそっちに行くでしょう?」

 

ホワイトキューブにぎゅうぎゅうに詰められた女たちはしんと黙ってしまった。会田氏の挨拶中も、きらびやかな井出達の女たちがどんどん入ってくる。会場の密度も匂いも、通勤ラッシュの女性専用車さながらの様相を呈してきた。

 

会田氏は、いまにもドミノ倒しが起きそうな会場内の不穏な空気を無視し、話を続けた。

 

「……でも、それで良いのです。僕もそうです。そんな芸術の無力さに対する皮肉を込めた作品がこの『ランチボックス・ペインティング』なのです。

……さて、僕は新潟出身ということもあり、今まで『米』を題材にした作品をたくさん作ってきました。おいしいおかずをおいしく味わうためには、炊き立ての白米が不可欠、日本人ならこの論に反対するものはいないでしょう……」

 

その時、作品に触れぬよう気を使い続けてきた壁際の客の一人がよろめき、とっさに壁に手をついたところ、そのぬちゃりとした感触に驚き、小さく叫んだ。

 

「この壁、お米だ!」

 

しんとした会場に響いたその声はすぐにどよめきをもたらす。他にも壁を触るものが出始める。会田氏は満足げに頷く。

 

「そう、やっと気づきましたね。美術品を引き立てる真っ白な壁と、おかずを引き立てる白米は同義なのです。

そして、おかず、すなわち肉もただの裸の肉というわけにはいかない、受け手の食欲を喚起するために色とりどりに、美しく、見栄えよくあらねばならない……」

 

遠くからずしんずしんと地響きが聞こえる。女たちのどよめきは悲鳴に近づく。

 

「もう入っていいよ、キングギドラ

 

会田氏のその声を合図に、頭が壊れたかと思うほどの轟音とともに、ホワイトキューブの上部が崩れ、キングギドラの首のひとつがのぞく。

やっと運命を知った女たちの断末魔を味わいながら、会田氏はひとりごちた。

 

「僕的には、ジューサーミキサーの方が好みなんだけどね……」

 

 

 

 

 

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会田誠展「はかないことを夢もうではないか、そうして、事物のうつくしい愚かしさについて思いめぐらそうではないか。」

2016/07/06 - 2016/08/20 火曜日から土曜日の11:00-19:00

@ミヅマアートギャラリー

 

この展覧会に、あまりにインスパイアされてしまったのでとりあえずオマージュの小説を書きました。

文中のリンクから飛ぶと、キングギドラジューサーミキサーの絵が観られます。

どちらも会田さんの有名な過去作品ですが、エグいので閲覧注意。

 

 

本当にすごい芸術家は「自分もやりたい」と思わせる人だ、と、私の大好きな芸術家は言っている。

 

2もあるよ(続編ではない)

花嫁の手紙のようなもの

お父さん、お母さんへ
 
手紙なんて普段は書かないし、なんだか照れくさいけれど、新しい門出を前にして、ふたりにあてた手紙を初めて書きました。
 
お父さん、お母さん、今まで、全然お世話になりませんでした。
二人のおかげで今日を迎えられたとはちっとも思っていなく、あたたかい感謝の気持ちでいっぱいでもありません。
今日を迎えるまで、狭くて、暗くて、でもどこか心地のいいこの場所に閉じ込められた日々を振り返ると、いろいろなことが思い出されます。
 
お父さん、私は、あなたを、ただ声でしか知りません。
私を見てもいないのに、私の名前を勝手につけて「俺の子だ」って、父親然として大きな声で威張っていましたね。
もちろんお父さんにも、悩みとか、苦労とか、大変なことが色々あったと思います。でも、私の名前を呼ぶ声のうしろからはいつも、忙しい仕事の合間を縫って買ってきただろうよく分からないおもちゃの音が、しゃらしゃら鳴っていました。
産まない性の気楽さを素直に受け入れて、おとなしくしていればいいものの、どこか後ろめたかったんでしょうね、
お父さんのそういうところ、ちゃんと気づいてたんだよ。
 
お母さん、私は、あなたを、声と温度と匂いでしか知りません。
ここは、お母さんが私のために作った、この世でただひとつの場所です。
姿が見えなくとも、時折降ってくる声で、お母さんがいつも見守ってること、いつもお母さんが私のことを考えていること、ちゃんと気づいてたよ。
「あなたにはきっとこれがお似合いね」とか、
「私の子なんだから私に似てきっと美人よ」とか、
「あなたがいるうちはこれを食べるのはしばらく我慢ね」とか、
「これもあなたのためよ」とか、
「私も頑張っているからあなたも頑張ってね」とか、
いつも私に話しかけてくれてたよね。正直とても気持ち悪かったです。
私の返答を聞かずに一方的に決めつけられること、感謝や愛情を押し付けられること。
 
お母さんがいなければ私はここまで立派に育つことができませんでした。
でもそもそも、お母さんがいないと、私は存在していませんでした。ただそれだけのこと。
その不思議と言えば不思議なめぐりあわせをかみしめるのに、愛情とか感謝とかを持ち出すのは、ずいぶんと雑な話ですよね。
 
今日、いよいよ私は、あたたかく居心地良くもあったこの場所を離れて、人生のスタートを切ります。
ここまでもひとりだったのと同じく、これからもひとりということを、忘れずに生きていこうと思います。でも、もうすぐ初めて見ることになるお父さん、お母さんがきっと浮かべているだろう、このうえなく幸せそうな表情を見てしまったら、忘れてしまいそうだけど。それでも。
生まれて、育って、大きくなっても、私はあなたたちに感謝しません。初めて顔を見ても、産まれてくれてありがとうなんて気持ち悪いことを言わないでください。私も、産んでくれてありがとうなんて気持ち悪いことは言いません。感謝するなら、もっと大きなこと、つまり、何億ものお父さんの種のひとつとお母さんの卵があわさって、私がここにやって来たこと、そしておそらく無事に生まれるだろうことへの、いろんなことのめぐりあわせの奇跡のようなものに、思いをはせていきたいと思います。
 
これから始まる人生、大変なこと、うまくいかないことも、たくさんあると思います。
でも、辛い時は、ここで孤独に過ごした時間を思い出して、力強く生きていこうと思います。
 

渋澤怜 twnovl(ツイッター小説) まとめ


「キャンキャン騒ぐんじゃねーよ」ノンノと首を横に振るK子を押さえつけると、学は荒々しくZipperを下ろし、すっかりViViになったMARA! をK子のPINKYな女性自身にあてがった。「an……an……!」K子の口から耐えきれずsweetなアエラが漏れる。 #twnovel

「ドーナツは穴が空いてるからいくら食べても太らないんだよ」と言い訳したら「なるほど、女にも穴があるからいくら食ってもまだ食えるのか」と返されてむかついたから閉経したエンゼルクリームを投げつけて「ママとやれば心の穴埋まるだろうよクソヤリチン」て言い捨て去ったミスド #twnovel

男の子は女の子の大好きなバラの花束を胸に抱き、ずっとずっと待っていました。ついに女の子が現れました。女の子は男の子に会えたのが嬉しくて、脇目もふらずにとびつきました。バラの棘が女の子の首に刺さって、女の子は血を流して死んでしまいました。おしまい。 #twnovel

「僕のフェティシズムをぶつけて済まない。君を愛しているから、君の靴を舐めたい」女は笑って、脱いだ靴を男にあげた。「僕のフェティシズムをぶつけて済まない。愛しているのは君の精神なのに、君の肉体を求めてしまう」女は泣きながら幽体離脱して、後には、男と美しい骸が残った。#twnovel

「好きなスポーツチームは?」「特に無し」「10代の頃の親友の名前は?」「特に無し」「初めて行ったデートの場所は?」「特に無し」「好物の食べ物は?」「特に無し」そんなのコンピュータに教えてたまるか。セキュリティを破られて奪われる情報より、そっちの方がよっぽど大事だ #twnovel
 6
マリオに惚れた栗は言った、「わたしはあなたの経験値になりたい」。栗を踏めない亀はなじった、「せいぜい好きな男の靴裏で死ねるといいな」。マリオは栗に感謝した、「君のお陰でクッパに勝てた」。姫を救い出して城に戻る途中、姫は栗に躓いて死んだ。 #twnovel
7
二度と嘘を言わない約束で、神様に豊穣を分けてもらいました。私はこれから老いるし死ぬだけだと嘆く少女にそんなことないよって言ったら、豊穣が僕の指の隙間から逃げて彼女の口に入り込みました。彼女は絶世の美女になったけど、美を守るために、死ぬまで一言も喋りませんでした。 #twnovel
8
「これ旨いな、何の肉?」「あなたの子(だったもの)よ。堕ろせって言ったよね」喩え子供を産んでも、籍を入れて貰っても永久に血は混じらないけど、こうすれば私の体から出たものがあなたの体の一部になる。激しく咳き込む彼に言った。「『ごっくん』してよ。いつもさせる癖に」#twnovel
9
「ねえねえママ、なんでお昼はお星様出ないの?」「それはねえ、お空の上にいる神様達が面白いことを言うのは大体夜だからよ」「じゃあママ、お星様が死ぬ前にすごく明るく、真っ赤に光るっていうのは?」「超新星爆発? ああ、あれは、赤ふぁぼの末のふぁぼ死よ」 #twnovel
10
◆覆修裡押砲修離ラスの中のひとりが、おとなになって精肉業者に勤めだしました。上司の隙を見て、機械で刻まれる豚肉に、自分の指を切って自分の血を混ぜていました。「僕も、誰かの中で生きていたいから。」#twnovel
11
◆覆修裡院砲海了の3人が、現在、新宿連続バラバラ殺人事件の主犯とみられるカニバリズム新興宗教「ありがとうわすれない」の創始者だったのです。#twnovel
12
 崙擇呂い弔睨佑燭舛魍擇靴泙擦討れて、しんだら僕たちの体になるんだ。こんなに僕たちの役に立ってくれることはない」「豚は死んでも、僕たちの中で生きてるんだ」「ありがとうありがとう」。 「その気持ち絶対忘れちゃだめよ」先生は言いました。「うん、忘れない」つづく#twnovel
13
(つづいてる)「ごめんなさい、ごめんなさい」リビングに入ってきた母が「やめなさい、そんな人殺しのゲーム!」と叫ぶと、振り返った彼は涙を流していました。「僕は今生命の大切さを学んでいるんだ」#twnovel
14
「ごめんなさい、ごめんなさい」クラスみんなで育てた豚を泣きながら殺す映像には、「命の大切さを学ぶ」とテロップが入っていました。少年はテレビを消すと、同じ画面でテレビゲームを始めました。麻酔銃から、一度も使ったことのない実弾銃に持ち替え、兵士を撃ちました。(つづく)#twnovel
15
入院中のママはある日、お見舞いの果物を剥くフリをしてパパを斬りつけましたのでした。「一緒に病院にはいりたかったの」「何血迷ったこと言ってるんだ」「あら、一緒のお墓に入ろうね、って言ったのはあなただったじゃない。うふふふふ……」#twnovel
16
「鏡よ鏡…世界で一番美しいのは」「それはあなたです!」「これは私の娘の写真よ」「これはいい画像ですね!」「それでも私が一番と言ってくれる?」「おやおや、何かがおかしい……」「実はもうこの娘は始末したの」「ありがとう。あなたのステータスをアップグレードしました!」
17
その嬢は青年がお金をあまり持っていないのは知っていたので、牛丼やハンバーガーしか食べたがりませんでした。「本当はこういう気取らないものが好きなの!」でも無理を重ねてちょっぴりファットになった彼女、捨てられた時気付きました。貧乏にこそ、高い夢を売るべきだったのだと。#twnovel
18
「本日は被験者協力どうもありがとう。実験に先立ち、あなたの生年、性別、国籍を教えてください」「えーと、1986年生まれで、男で、日本人です」「おお、いいサンプルですね」「(何か言い忘れたような……)」「ああ、いいよ、名前は。名前は何の情報も持たないからね」#twnovel
19
ある人が意訳機を作りました。ゲージをマックスにしたら、ハローハワユー、ファインセンキュー、すべて「かまってよ」になりました。次についったーのことばを全部入れてみました。やっぱりそうなっちゃいました。壊れてると思って捨てられちゃいました。#twnovel

渋澤怜 twpoem(ツイッター詩)まとめ



パソコンがバンして少々痛い思いをしたので、
書いた文章のまとめは、できるだけネット上にあげておこうと思います。

ん? クラウド? んんー?



大気圏で鼓膜が音速を超えて、毛細血管が脈を打ち、血圧は上昇。三半規管に支障が出てきた頃に中枢神経が告知した、ここは天国。足が無くなったかもしれないと思うほど浮いたのに、突如着地してしまった。「今のバンド超良かったね!」という君の声のせいで。現世管理人しか思えないよ。愛なんかクソだ

子供は落書きをする時に定規で長さを測ったりはしない。お酒は20歳になってから、も、初めては好きな人としなさい、も、このサイトは性的なコンテンツを含みますあなたは18歳以上ですか、も、全部無視した未成年が、信号だけを守って生き延びた時に初めて老いる。跳ね飛ばされた軌道が見たかった

折れたハイヒールを捨てて裸足で歩きながら、もう月まで行っちゃうかと思ったけど、(6分の1とはいえ)重力とかダサいし、逆に土に埋まりたくなった。君の運動靴はべったりと土を踏むから羨ましい。ちゃんと君の重みの分凹むし、私はその分ちゃんと死んであげよう、境目が分からなくなってあげよう。

女の子だけがもらえるポケットティシュに書かれた番号に電話して、極彩色の天国に飛んだけど、好みの男の子がいないので帰ってきました。誰でもいいけど、お前じゃないし。君しかいないけど、君が死んでも、代わりはいるもの。

辞書は役立たずで、何者かに書き換えられている!2語ずつズレたオノマトペで君に愛を伝えたら、拳が返って来たが、それでも私は小気味良かった。だって、命中したし。こちとら実は誰でも良かった。むしゃくしゃしてやった。今も反省はしてない。他人を鏡に使って身づくろいするのは、女子の特権なのだ

ケーキが焼ける15分が待てずに、私と親友は森に出かけたのだけど、そこは結局日本だし、何も狩れず、摘み取れなかった。しぼんだケーキは砂漠色で、知ってるカフェは学校色で、結局、犬にでも食わせておいた。私達は知ってしまっていた、どうせ、人類は、月までいっても歩くのだ。

お金で買える愛なんて、と言った唇が、自分を安売りしちゃだめだ、と諭してきたから、どうせ私は売り物なのね、と叫んで、首輪を千切った。値札の無い化け物こそ最強。なのに、君の財布を奪った私は、たくさんの札束を見て泣いた。そこには全て、私の名前が、小さな、丁寧な字で刻まれていたから。

絶対安全カミソリの夜は、日付変更線を切り裂くけど、別に寿命が伸びるわけでもない。血もマスカラも、濃いほうが良い。漆黒、という言葉が売り文句になって久しいけれど、闇が深い方が業も深いのに、なぜそんなもの塗りつけるんだろうなあ、と、ダイイングメッセージを書きながら。

神様がサイコロを振らないなら、降らない雨を予報する君は誰。明日が涙で濡れるほどに、今日の感情を動かす君の、背骨の窪みの汗まで愛す私は、実は死ぬ日を知っている。それでも博打肌の君に賭けるよ、天地なんかひっくり返ってしまえ。
10
3分待って、マスカラだけ塗らせて。書き割りみたいでもいいからそれっぽくいさせて。君の隣にいるそこそこの生き物でいいから、その後溶けてどろどろになってもいいから、どうせ10代なんて短いし、白くて長い脚がまっすぐでいるうちに、最果まで走らせてよ。
11
どうして女の子がロックをしてはいけないの。鳴らない目覚まし時計は昨日の見た夢の延長戦を誘う。あの子が妊娠して、その子は君に違いないのだった。君に恋しないわたしは最強。わたしのことを目にも止めない君こそ最強。
12
憧れの金属片を埋め込まれて別人種を気取りたかった。先輩の第二ボタンをいくら集めても、進化なんかできなかった。そういうことならせめて、時の流れにBボタンを連打して、いつまでも抵抗していたかった。非力で、華奢で、無益どころか無害どころか、有害なほどに可愛いだけの存在で居座ってやる。
13
寿命で死ぬのはブス、だってさ。死ぬタイミングまで可愛さにこだわる我々は確実に誰かの奴隷だ。飼い猫みたいに首輪をしたら飼い猫みたいに可愛いかな。ケーキナイフを喉に刺したらケーキみたいに可愛いかな。 鉢植えの花みたく手足を切って収まれば、鉢植えの花みたいに可愛いかな。
14
うちにいる神様見てく? って言われたから寄った。キラッキラに磨かれたギターの盤面はまるで鏡のように私を映した。今どこにいる? と聞かれて、頭蓋骨の内側、と答えたら、神具のギターが振り下ろされて、私の頭を叩き割った。6弦がゆで卵みたいに私の脳をスライスし、完全和音が聞こえたんだった
15
感動しよう。感動しよう。ライヴハウスでは後ろの壁にもたれ、眉根を寄せて腕組するのが格好良いと思ってる君の正中線を舐める赤いレーザーポインタ、私は「逃げて」と口に出さなかった。すいか割りみたいに爆ぜた君の肉の色の鮮やかさにわたしは、息を止めた。君も見られたら、絶対に、感動しただろう
16
好きなタイプは死なない人、と君は笑い、その大きな女の人の背中にナイフで自分の名を刻んだ。書き初めのように大きな文字はいつしか君自身より大きく広がって、皮を剥かれても君をくるめる余裕があるだろう。私は自分をくるむので手一杯で、手のひらに小さく自分の名を掘った
17
わたしだけは交通事故に遭わないし、勤めてる会社が倒産したりしないし、雷に打たれないし、通り魔にも刺されないし、作ろうと思えば子供なんて一発で着床させられると信じている。
18
自分の本名を忘れて、ググったら出た。でもよく分からんけど隣に誰かがいれば聞けたのにな、と思った。この、一丁目にいる身体と電子の住人の、どっちが本体で、どっちがよく知られていて、どっちの方が死んだら悲しまれるのか。同窓会で久々に本名にさん付けで呼ばれた
19
卵のまま孵らずに、美味しいオムレツになることと、生まれて育ってたくさんのエサを貪り食った後にチキンになることと、たくさんのチキンを食い散らかして大きな身体を振り回した後、誰にも食われずに土に埋まることの、どれが一番偉いのだろう
20
私すぐ死んじゃうので手短にお願い、はあ保険と宝くじなら当てる自信あるわ、即納にベット、期限は24時、愛してるならちゃんと見ててよ、照れとか証明とか、時間さえも要らない、あなたの側では必要なの?私があげられるのは身体だけだよ。腐ったネクロフィリアよ、隣にいる人を選べなかった私が悪い
21
コーヒーに砂糖を入れている私に、「コーヒー派ですか紅茶派ですか」「紅茶には砂糖入れる派ですか」と聞くあなたは、何を見たいのか何を知りたいのか、未来の予測を立てたいのか。目の前の人間の輪郭を掴みたいのか。私は意地悪だから(そしてものすごく誠実だから)「時による」と答えた。 #詩
22
大人になったのでミニスカートを捨てる。さようなら私のまっすぐな長い脚。長くてゆったりとして無難な、まるで妊婦になっても着れる服ばかり。それは強姦しやすい服でもあり、エコノミーだ。子宮も冷えないし。さようなら私の、とても男らしかった、武装服。もう死ぬまで同じ服でいい #詩
23
司会者みたいな喋り方をしないでくれ。そうやって2.3センチ浮いてるから、もし地震が起きても地割れに落ちない代わりに、君は腹の底から笑えない。お前の代わりはいくらでもいる、と言ったら、声が反射して僕も不死身になってしまうから、だからそんな、機械の身体のフリはやめて体温をくれ。 #詩
24
さみしさなんてこの世になくて、さみしい人、さみしい行動、さみしい時と場合が溢れてるだけですこの世に。/あなたが不誠実な人間なのでは決してなくて、不誠実な行為、不誠実な瞬間、不誠実に見える角度をただ積み重ねてるだけです私の前に、そう信じてます。 #詩 #twpoem
25
一番叶って欲しくない願い事を、一番の強さで願ってしまう。それが人間。永遠は罰ゲームだし即興は発作だ。地獄は瞼の裏にあるけれど、天国はきっとそうではない。それでも、女神に願いを急かされたら、名案のつもりでこう言ってしまう。僕のことをみんなが愛してくれますように。 #twpoem
26
解説をつけすぎた詩集が死んだ。「あの人のどこが好き」と聞かれ、優しいところ、美しいところ、思いつく限り箇条書きで挙げ尽くしたら煩悩の数と全く同じになった。CMを挟んだら犯人が死んでた。前編を観た視聴者の投票で決められたそうだ。そう言えばあの本を殺したのは私だった。 #twpoem
27
金銭、数字、計画、未来、契約、結婚、その他言語で作った枠一切について、君とは二度と語らないと決めた。ただ、刹那的な戯れ言と、芸術と感情の話しかしないと、決めた。決めたので、決めたので、最後の約束に、ここに血判を下さい。 #twpoem

 

小説・小野ほりでい

 何万字書いても「メンヘラブログ」と言って切り捨てられるかもしれない。私はインターネットに要約されてしまう存在なのかもしれない。ゆとり世代で高学歴こじらせでジェンダークラスタでクリエイターワナビでサブカル女子で、はいおしまい、なのかもしれない。喋れば喋るほどからめとられる。ああ中央線住みなのね、やっぱり。

こう思っていると脳が痩せる。痩せた脳は他人の情報も圧縮し容量をケチり始める。

高卒ガテン系で湘南の風とか好きなマイルドヤンキーかもしれないし、facebookに誰かれ構わずタグ付けして誰とどこ行ったとか全部書いちゃう情報開示がゆるふわなスイーツかもしれないし、結婚式に月2で行ってて休日はフットサルの意識高い系かもしれないし、なんか全員嫌いになってきた。

大前提として既に自分のことが嫌いだ。

好きになるのに理由は要らないのに、嫌いになるには理由が要る、とはよく言うけれど、この「見切った」という感覚だけで人を嫌いになれる、というか飽きることが出来る。

 

更に困ったことに、自分から貧しい方へと進んでしまう愚かな癖が芽生えている。すなわち人に会ったら「お仕事は」「趣味は」「好きな本は」「映画は」「スポーツは」と聞き進めてプロファイリングする。私の中の刑事が得意気に余計な仕事をする。あーこの人はDQN、この人はパンピー、この人は浅すぎるサブカル、よって完全に見切れる。私より頭悪いんだから付き合う価値無いよ、ハイハイ、と、刑事がかぶりを振りながら作り上げたプロファイリング資料をキャビネットの奥の方の重いファイルに綴じてしまう。そしてまた私の脳は痩せる。

 

下北沢の、コッペパンみたいな靴を履いた大学生の女が喜びそうな木色のカフェで野菜が沢山載ったプレートランチとかを食べればせいぜい1,000円、食後に自然派で甘さ控えめで玄米とか使ってる大体ロールケーキとかのスイーツを食べてお茶して7800円、そういうのに付き合わされることになると、もうメニューを見ただけでお腹いっぱいになり、運ばれてきた料理を口に入れても味がしなかった。味無いなーと思いながら、会話聞いてないなー、と思いながら、ガールズトークを受け流しお茶とケーキを胃に流し込んでいた。

 

気付いたのは、メシテロと呼ばれる、深夜にTwitterに投稿されるラーメンの画像を目にした時だった(余談だがサブカル好きはラーメン好きが多い気がする。知識を溜め込み、より『通』な嗜好を極めていくという点が共通しているのだろうか)。次郎インスパイアという簡素な説明文とともにもやしとチャーシューが山盛りに積まれたどんぶりの画像を見て、ああこの味はよく知ってる、この系統のラーメンの味は、特段おいしいというわけじゃないけど時々無性に食べたくなるんだよなあ、ああ食べたい、と思った瞬間、もう私の腹は膨れていた。馴染みのある、脂と炭水化物の多い食事の後の重ったるい腹の膨れ方だった。

感覚が信じられず、他のラーメン画像を探して試してみたら、ピンと来たいくつかの画像を見つめているとずんずんと腹が重くなり、結局、吐いてしまった。予想がつく味なら、とりこめるらしい。口を経由せずとも。どうせ味は分からない。私の口は無用の長物となり、いずれ歯や舌を失ってただの虚ろな穴と化す。

 

次は音楽だった。音楽ニュースサイトを流し読みしつつ『刃物のような冷たさと鋭さをもって心の裏を抉るエモーショナルなリリックと、オルタナティヴ・ロックをベースにしたソリッドなサウンドで2010年代の一翼を担う3ピース・バンド。2014年はインディーズながら渋谷O-westをワンマンをソールドアウトさせ話題を席巻。』みたいな能書きとアー写、それとライヴ予定の対バンを見ればもう耳鳴りがした。私の耳はへなへなと形を無くし外耳を覆うように溶けて顔と一体化し、私からは詰め物をしたように音が遠のいていく。

 

『日本の現代アートの騎手、飯田一氏の作品「タコゴジラ」は、伝統的な浮世絵(春画)の構図と、戦後アニメーションの手法を引用しながら、江戸時代から現代日本に至るまで通底する記号的エロティシズムをサンプルとして摘出し様式的に捉え……』とかいう、近日公開の展覧会に寄せた批評家の批評文を読めば、わざわざ展覧会に赴いて実際の作品を観なくても分かった気になるし、逆に言えば観ても結局分からないのだった。眼球は眼窩の中に溶けていきどんどん小さくなっていく。

 

聴かなくても、見なくても、ただキーボードを叩ける腕があれば、高尚さを演じることが出来る。先回りして自分の安住の地を獲得し、高みから他人を見切って、プライドを維持することが出来る。

 

無気力な穴が空いているだけの顔、痩せた脳、そんな身体はろくに食べなくても維持できる。

どこにも行かなくて良くなった脚はすっかり退化しPCデスクの下でもやしのようにぶらんぶらんしている、それを見てふと思った、はじめに死んだ身体の部位は口ではなく脳でもなく、心だったんだろうな。

【小説】いざという時身体を売れるということと、いざという時男に犯されるということが完全に等価であり、その振れ幅が私を生かしている

 

いざという時身体を売れるということと、いざという時男に犯されるということが完全に等価であり、その振れ幅が私を生かしている。どうして女の子がロックをしてはいけないの? それは一物がついた女を誰も見たくないから(女でさえも)。夜中に歩いてナンパされるのも暴漢されるのも女の子の特権。タダ酒は諸刃の剣で、タダより安いものは無いし、でも酔わせてどうする気なのか。酒で出てくる程度の本音なんかに用は無いしそれで割れる程度の腹なんてたかが知れてる、服を脱いでも臓器は見えないし私はもっともっと奥にしかいないし自分でも見たことが無いのだから、一度表面を触ったくらいで偉そうなことを言わないでほしい、でもその言葉は翻り私の胸を刺す、私はあなたに触れた程度で何もわかっちゃいないのに何故こんなにも特別な感情を抱くようになってしまったのだろうか。本当は触れるだけで全て伝え合う生物になりたかった。

 

脳の誤作動を恋というなら脳のデバッグをしっかりしとけば大丈夫と思ってた自分がバカだったのか? 捨て犬は路上で野生の勘を研ぎ澄ませている。一度の機会を逃さず女の身体を急所をがぶりと噛む。身体の防御力も高いつもりだったのに、それは所詮人間の男相手だったのだろう。

 

分かっている、野良犬はエサをやってくれる人間に近づく。が、愛するわけではない。

彼は言った。金を貸してほしい、と。

私は言った。私以外に借りないならいいよ。

私と座って酒を飲むだけで対価を与えてくれる男達から流れ落ちた金を彼に流し込むのはひどく合理的に思えた。つまり私が(若い)女であることで不当につり上がっている私の対価を、もし男だったら私もそうなっていたかもしれない、路上をうろつく貧乏人である彼に注ぎ込むことが、世の中を適正化する行為だと思えたのだ。

私は、崖になっている世界の端から滝となって流れ落ちた水を再び世界に組み上げる風車、あるいはメビウスの輪の結び目になっている気がした。

でもそれってキツくない? と言ってくる外野には静かに口を閉ざした。世界の仕組みに比べて私の感情なんてなんて小さなものだろう、とは思わないのか?

どうやら彼は私との約束をきちんと守っているようでこまめに私のアパートに来ては金を受け取りそのままたびたび泊まった。しかし野良犬の高潔さで長居はせず朝早くに去った。もしかしたら私が運んでいるのは滝の水でも金でもなくて、実は愛なのかもしれないと思うこともあった。男達は私を愛で、私は彼を愛す、では彼は男達を愛するのだろうか。男達の中で一番私に多くを注いでいた男は私に寝床を提供したがった。ここよりずっと上等な。私がその申し出を受けたら、余ったこのアパートは彼の定住地となるのだろうか。

私はたびたび、男と彼が交わる夢を見た。そこは私のアパートで、私を尋ねて来た男(そんなことは現実には一度も無かったが)がたまたま居合わせた彼に出会うという筋書きだったが、彼と男は目があった瞬間に一心不乱に絡まり始め、家主にも関わらず私は完全なる傍観者なのだった。

 

私は世界の要でなくただの裏方で、例えるならメンディングテープくらいの存在な気がしてきた。透明で目立たなく、安っぽい、つなぐべきものをつなぐだけの……

 

野良犬が吠えるのは深夜だった。私が綺麗に着飾り都庁のある街で男と落ち合いエレベーターで何階も浮き上がったところにあるフレンチでふわふわした気分で食事をして、地上に降り立ってやっと安堵したところで彼に出くわしたのだった。路上に尻をつけて座り込んでいる彼の抱えたギターは凶器に見えた。瞬間的に私は、彼が男を殺すのではないかと直感し、狂おしいほどの胸の高鳴りを感じた。だがもちろん違った。彼は通行人の多く通るその場所で弾き語りをしていたのだった。そのことは知っていたが今日ここで出くわすとは思っていなかった。耳慣れた、慕わしい、私にとって愛しいものでしかない彼の声を、隣の男はその場に立ち止まり眉間に皺を寄せて注意深く聴いた。曲が終わると男は上着の胸ポケットから革で出来た上等な名刺入れを取り出すとつかつかと彼に歩み寄り、名刺を差し出した。彼は路上に尻をつけたままだらりと手を伸ばしてそれを受け取ったが、名刺の左上にあるロゴマークを見て眼の色を変えた。そうだ、男の職業はレコード会社の役員だったのだと私は思い至った。彼が立ち上がる。男が数々の言葉を尽くして雄弁に彼を褒める。彼の頬がどんどん紅潮する。一瞬彼は、男の後ろに立っていた私に気付いて目を丸くしたがメジャーとか契約という言葉を熱を込めて繰り出す男の方にすぐ視線を戻した、その時、私は役目なんか無い、この世に本当に要らない人間なのだと完全に分かった。つながっているのだから、テープは要らない。私なんかに役目があると思うことこそ僭越だった。何を分かっていた気になっていたんだろう。世界の要だなんてばかばかしい。今すぐこの脳かち割ってくたばりたい。……白んでいく私の視界に、彼のうしろにおつきの者のように控えている、私より少し年下であろう、でも化粧を全くしていないので男の目にはもっと年下に見えるだろう、背の低い女がぼんやりと映った。彼と同じく、路上に何時間座り込んでも平気な分厚いジャンパーとズボンを着こみ、そわそわとスニーカーのかかとを浮つかせながら両手をぎゅっと祈るように握り、彼と男の会話に懸命に耳を澄ませている。そして時折、思いついたようにギターケースに放られた小銭の方に目をやり無くなってないか確認するのだった。

完全に、運命共同体という感じがした。

やっぱり、全然風車でもなんでもなかった。私が思う金も愛の流れも間違っていて、私が把握出来ないように世界は流れ出していた。どうして、気付かなかったのだろう。いや、どうして理屈の上で、その可能性に思い至らなかったのだろうか、彼も私と同じであり得ると。

アンゴラのコートの下に紙みたいに薄いワンピースを着てピンヒールで踵を尖らせている私は全て男に買ってもらったそれらをかなぐり捨てて、裸になって、車道に躍り出て轢き殺されたかった。なぜ、そうしなかったのだろう。もっともっと、私の分からないように世界が出来ていてほしいと期待していたからだろうか。この期に及んでまだ、世界に、狂おしいほどに期待していたからだろうか。

「世界ちゃんとバラバラ・ガールズ・ディストピア」通販開始!

201411月の文学フリマの新刊

「世界ちゃんとバラバラ・ガールズ・ディストピア」の

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『バラバラ・ガールズ・パラダイスは、

膨大な女の子パーツをあなたのオーダーに合わせて組み立てて、

あなただけの理想の女の子を提供する、全く革命的な新時代のナイト・サービスです。』

 

自分の肢体が美しいことを確認するために毎晩バラバラ・ガールズに通い

身体を分断させながらファボを稼ぐ女・ヨソミが、

世界を旅する世界ハンターに丸ごと射止められ、世界ちゃんを襲名するまで。

 

あまりに才気煥発すぎて男をビビらせてしまうこの利発な脳みそから切り離されれば私の肢体は存分に魅力的である。/せっかく世界ちゃんと一体化出来る場所に来たのに、エゴサばっかしてファボ数ちくちく数えて終わるって、しょぼいよ。/知ってる? 女の子のお腹の中には時限爆弾があるの。/君のエゴサ頻度かなりヤバい/私は普通の女の子になりたかった。だから私は全員の女の子になることにしました。/イイネ・イイネ・ディスオーダー?/化け物も乙女も老婆も魔女もすべてたたえた、私は世界ちゃんだよ、世界ハンターさん。

 

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……何言ってるのかわかんないと思いますが、

あらすじ書けねえんだよ、不思議小説過ぎてwwwww

 

……チャットレディの体験を元に

「何カップとか脚が細いとか、

性的な視線で身体をバラバラにされて査定されることは

嬉しくもあり、でも貧しくもあるなあ」

という考察からインスパイアされた小説です。

小説というより長めのポエムのようで不思議な読み味になりました。

文藝賞は落ちた(1次も通らなかった)し、何が悪いのかも超分かってるのですが

個人的に愛着がある小説だしこれはこれで結構面白いので、

急遽製本することにしました。

 

文学フリマで買い逃した人も、ぜひお買い求めください!

 

この1年で貯金が100万以上減って落ち込んでる渋澤先生を、ワンクリックで応援しよう!

第51回文藝賞応募しました&4月から無職です

 身体部位を好きに組み立てて理想の女の子を抱けるバラバラ風俗と、

リアルタイムハメ撮り配信SNSサイトが舞台のお話を書きました。142枚、48900字です。

 

 

自分的にはまあ良く出来たかなと思うけど、

この程度で倒せる敵じゃないことも分かってる


今回の小説は、310日に構想を始め、19日に書き始め、締め切り日の331日に書き終わりました。

こんなに短い期間に書きあげたことは今まで無かった。

華の有給消化期間とはいえ、よくやったと思います。

うん、よくやったよ渋澤! フー!!

 

 

しかし、213日からゲットした有給消化期間を、2月中は遊び倒し、3月の48日は熱を出し、その時点で構想さえ全く手をつけていなかったので、一度文藝を諦めていた。

 

で、病床で

「自分はこの一年何をやっていたんだろう、前回の文藝二次通過の後から何をしていたんだろう。

『小説書いています』と言っていながらこの一年間ちょっとした短編以外書いていなかった。このまま文藝を流したらマジクソだわ……」

とうじうじしてました。

 

だから今回のは本当書けて良かったです。

 

(しかし本当、この一年間何をしていたんだろうか……謎だ)

 

とはいえ、自尊心の保全のために小説を書くとかおかしい。

もちろん小説は知らない自分を見たりトリップしたり、物語の力で救済したり新しい世界を見せつけるために書いているのであって、

今回は割とそれが出来たかなあと思う。

理屈でドライヴするところが少なく、プロットは緩い上に半分くらい脱線した。

良い兆候だと思う。

 

思ったこととしては、締め切りに追い立てられて書くと要らないシーンをバンバン切るから良くなるね!!!笑

 

デスマーチだったけど、この「切る」を学べたことだけでも良かった。

今までこれが出来ずに、だらだらと長く書いてしまっていた。

今回のは142枚と短めだけど、密度が濃くてビシッとしてる気がする。

 

でもデスマーチはもうごめんだけどな(チキン)

 

本当よくこのペースで書いたよ……

うんざりしてしまって、本来楽しいはずの書くという行為がつまらなくなってしまうのはもったいないなあと思った。

 

40000字ペースはオススメしないぜ……

平日2000字、休日50008000字で週20000字〜25000字ペースが一番良かった

やっぱり働くって大事だなあ〜☆

 

 

小説は、うまくすれば文藝冬号、うまくいかなかったら11月の文学フリマに出します。

 

いろいろ言いましたけど渋澤史上一番面白いことは間違いないです。

皆様のお目にかかれる日を楽しみにしています。

 

公募作だから当落が決まるまで公開できないのですが、

知り合い限定で、読みたい人にはメールで渡しますのでご連絡ください!

ぶっちゃけ、書いたものはすぐにでも読ませたい……公募はもどかしい。

 

あ、あと41日になりましたので私はめでたく無職です。

無職記念としてCRUNCH MAGAZINEで「チャット嬢をやってみた」

連載開始しますので、ぜひご覧ください!

 


あとあとあと、ガールズバーのバイトを始めました。

中央線沿線です。

これまた来たい人(いるのか?)は店名と源氏名を教えますので、ご連絡を笑

一時間30004000円あればオッケーだよ!

すでにいろいろ、とても勉強になっています。

 

では、本日より無職の渋澤怜をよろしくお願いします。